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コラム「コンパス」

3 11, 2025

コンパス #6:米新政権がパリ協定の再離脱を決めた理由

2025年1月20日、トランプ大統領が就任した米国の新政権がパリ協定からの再離脱を決定しました。これにより、世界の気候政策や国際的な脱炭素の流れにどのような影響があるのでしょうか? 今回は、米新政権が再びパリ協定を離脱した背景とその主張を整理し、今後の企業への影響について解説します。

こんにちは、マーケターのアミーゴです。この連載「コンパス」では、脱炭素を目指す企業の皆さんに役立つ情報をお届けします。

今回のコンパスシリーズでは、米新政権の気候政策の変化を整理し、国際社会の反応や企業の対応策を4回にわたり解説します。2回目となる今回は、米新政権が再びパリ協定を離脱した背景とその主張を整理し、今後の企業への影響についてお伝えします。

関連記事:コンパス #5:パリ協定とは?米国の離脱・復帰の歴史と企業が今取るべき対応

 


目次

  1. 米新政権の「米国第一主義」と経済優先の方針

  2. 化石燃料産業の支援とエネルギー政策の転換

  3. パリ協定の「不公平な負担」と米国政府の主張

  4. 短期的な経済優先の影響と今後の展望

  5. 米国のパリ協定離脱で企業に求められる対応策


 

 

 

米新政権の「米国第一主義」と経済優先の方針

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米新政権は、「米国第一主義(America First)」を掲げ、国内産業の発展と雇用創出を最優先しています。環境規制の強化が経済成長の妨げになるとして、規制緩和を推進しています。

トランプ大統領は2025年3月4日の連邦議会合同会議で、国内エネルギー生産の拡大や新たな石油・鉱物採掘の推進を強調。エネルギーコスト削減によるインフレ対策を掲げ、輸入品への関税強化で米国産業を保護する方針を示しました。

これらの政策は、経済成長と競争力強化を重視する「米国第一主義」の一環とされ、パリ協定からの再離脱も「米国の利益を守るための決定」と位置づけられています。

参考:Transcript of President Donald Trump’s speech to a joint session of Congress|APニュース

 

化石燃料産業の支援とエネルギー政策の転換

バイデン政権が進めた再生可能エネルギーへの移行とは対照的に、米新政権は化石燃料産業の活性化を重視しています。特に、エネルギーの独立性を強調し、国内生産を拡大する方針を打ち出しました。

米新政権の主な施策として、以下のような取り組みが進められています。

  • 石炭火力発電所や石油採掘事業の規制を緩和し、発電コストを削減。
  • 国内の石油・ガス産業を支援し、雇用と競争力を強化。
  • 海外からの燃料輸入を減らし、エネルギー供給の安定化を推進。
  • インフレ抑制法(IRA)の修正を検討し、化石燃料産業への規制緩和を進める。

短期的には化石燃料関連企業にとってメリットがありますが、国際市場の脱炭素化が進む中で、長期的には競争力低下のリスクも指摘されています。

参考:トランプ氏再選時の環境・エネルギー政策|みずほリサーチ&テクノロジーズ


パリ協定の「不公平な負担」と米国政府の主張

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米新政権は、パリ協定が「米国に過度な負担を強いる不公平な合意」であると主張しています。特に、新興国と先進国の排出削減義務に大きな差があることを問題視しており、「中国をはじめとする新興国は緩やかな削減目標を設定できる一方で、米国は厳しい排出削減義務を課されている」と批判しています。その結果、米国の産業が不当に不利な立場に置かれ、経済成長や雇用に悪影響を及ぼすという懸念を示しています。

さらに、米新政権は「パリ協定によって米国企業の競争力が損なわれる」とも主張しています。他国が排出を続ける中、米国企業だけが厳しい環境規制を遵守しなければならない状況は、公平性に欠けると考えています。特に、エネルギー集約型の製造業や化石燃料産業にとっては、競争力の低下を招き、海外の競合企業に市場を奪われる可能性があると警戒しています。

また、新政権は企業の自由を尊重し、政府による強制的な規制よりも自主的な取り組みを重視する姿勢を打ち出しています。環境対策は企業の判断に委ねるべきであり、規制の厳格化によって企業活動の柔軟性を損なうべきではないと主張。政府が一律の目標を押し付けるのではなく、各企業が独自の方法でサステナブルな成長を模索する方が、経済にも環境にもプラスになるとの立場を取っています。

このような考え方が、新政権によるパリ協定の再離脱を正当化する背景となっています。



短期的な経済優先の影響と今後の展望

米新政権の決定により、短期的には化石燃料産業や一部企業にとってメリットがあるかもしれません。規制緩和により、エネルギーコストの低下や国内産業の成長が期待されます。しかし、世界の脱炭素化は止まらず、米国の政策が国際市場での競争力低下を招くリスクも指摘されています。

米国がパリ協定から離脱したとしても、他国は引き続き脱炭素化を推進しており、国際的なビジネス環境の変化に対応することが企業に求められます。

  • EU・中国は気候政策を強化し、カーボンプライシング(炭素税・CBAM)を導入。炭素排出の多い製品は輸入時に追加コストがかかり、米国の競争力が低下するリスク。
  • 米国内の州政府・大手企業は独自に脱炭素を推進。連邦政府の方針とは別に、環境基準を満たす動きが加速。
  • 米国企業が国際市場で不利になる可能性があり。貿易・投資面での影響が懸念され、グローバル市場での競争力を失うリスク。

今後の焦点は、米新政権の決定が企業にどのような影響を与えるのか、そして他国が気候政策をどのように進めていくのかにあります。
米新政権の決定により、短期的な政策変更に振り回されるのではなく、企業は国際的な脱炭素の潮流を見据えた戦略が求められます。特に、カーボンプライシングの影響を考慮し、排出量管理を進めることが重要です。

 


米国のパリ協定離脱で企業に求められる対応策

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米国のパリ協定離脱により、国際市場の脱炭素要件と国内政策の間で対応を求められる企業が増えています。今後の不確実な状況に備え、企業は以下の視点から戦略を立てることが重要です。

短期的視点:規制緩和の恩恵を活かしつつ、国際市場で求められる脱炭素基準への適応を進める。

長期的視点::グローバルな脱炭素の潮流を見据え、自社の競争力を維持するためのサステナブルなビジネスモデルを構築。

投資家視点:GHG排出量管理を強化し、ESG投資の要件に対応することで資本市場での評価を向上させる。

関連ページ:
脱炭素に向けた大手・海外企業の取り組み事例とTerrascopeの支援事例

今後も、米新政権の政策に対し国際社会がどのように反応しているのか、企業がどのような戦略を取るべきかについて、引き続き分析していきます。
次回は「米国のパリ協定再離脱、国際社会の対応は?」について詳しく解説します。

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