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気候開示

SSBJとは?開示基準や義務化の対象と適用時期の見込みについて解説

サステナビリティへの関心の高まりにより、企業には環境・社会に関する質の高い情報開示が求められています。こうした背景から、国際基準の「ISSB」と国内基準の「SSBJ」が設立され、その動向に注目が集まっています。

情報開示の基準を統一し、国際的に企業同士の比較ができるようにすることが急務となっています。投資家をはじめとするステークホルダーは、企業の財務情報だけでなく、気候変動や環境、社会に関するリスクと機会が企業の長期的な価値に与える影響を評価するために、より質の高い情報開示を求めています。

このような背景のもと、国際的なサステナビリティ報告基準を策定するISSBと、日本国内におけるサステナビリティ報告基準を開発するSSBJが設立され、その動向が注目されています。

この記事ではISSBとSSBJの概要や今後の適用見込みについて解説します。

 


目次

  1. そもそもISSBとは

  2. 日本で適用されるSSBJについて

  3. TCFDとの違い

  4. Terrascopeの脱炭素化支援

 

 

そもそもISSBとは

2021年 COP26においてIFRS財団評議員会により設立されました。ISSBの正式名称は「International Sustainability Standards Board」であり、日本語では「国際サステナビリティ基準審議会」と呼称されます。投資家と金融市場のニーズに特化し、透明度が高く包括的なグローバルベースとなるサステナビリティ基準を開発する組織です。

企業の脱炭素化の取り組みが進み非財務情報の開示が求められる一方で、世界には非財務情報開示基準が乱立し、投資家だけでなく企業もどの開示基準を参考にすべきか判断が困難でした。このような状況を踏まえ、IFRS財団が基準審議会を設立し、サステナビリティ報告の世界共通基準を策定することにしたという背景があります。

特に、2017年にTCFDが気候関連リスクの開示枠組みとして提唱され、多くの企業が採用し始めたことを受け、IFRS財団はこれらの既存の枠組みや実績を踏まえ、投資家が企業のサステナビリティ情報を正しく評価できるよう、ISSBを設立して統一基準の策定を進めるに至りました。

参考:ISSB―最初のサステナビリティ開示基準を公表(IFRS)

ISSBの開示基準

ISSBが策定したサステナビリティ情報開示の国際基準は、IFRS S1号とS2号の2つの基準があります。
この基準は、TCFD提言の4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)を基盤としており、企業はこれらの視点から、サステナビリティ情報と財務情報との繋がりを明確にする必要があります。

  • IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」
    投資家や融資者など、企業の一般目的財務報告書の利用者が意思決定を行うために有用な、企業のサステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報の提供が求められます。

  • IFRS S2号「気候関連開示」
    気候変動が企業の事業や財務に与える影響に焦点を当てた基準であり、気候関連のリスクと機会を評価し、その結果として、企業の戦略、財務パフォーマンス、キャッシュフローにどう影響するかを開示することが求められます。

なお、下記SSBJ公式サイトで、英語原文・日本語訳版の文書と、日本語の解説動画を確認できます。

参考:IFRS S1号・S2号 | SSBJ公式サイト

ISSBの適用対象企業

ISSBは開示基準を制定する機関であり、実際に適用対象の企業を決定するのは各国の規制当局がISSBの基準を国内法や規制ルールに取り込む場合となります。

例えば、EUでは2023年にCSRD(企業サステナビリティ報告指令)が成立し、ISSB基準との相互運用性を持つように設計されたESRS(欧州サステナビリティ報告基準)が採用されました。これにより、大企業や上場中小企業に対してサステナビリティ情報開示が求められています。

そして日本では、金融庁を中心にISSB基準を踏まえたサステナビリティ開示の制度化が進行中で、2022年7月にSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が設立されました。

参考:ESRSの適用開始 | EU公式サイト(英語)

 

日本で適用されるSSBJについて

SSBJは2025年3月5日に、日本において適用される初のサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を公表しました。SSBJ基準は、「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3つで構成されています。

画像引用:サステナビリティ基準委員会

  • サステナビリティ開示ユニバーサル基準
    サステナビリティ関連財務情報の開示に関する基本的な事項を定めています。具体的には、情報の記載場所、報告のタイミング、比較情報の提示、誤謬の訂正など、開示全般に関わる基本的な要求事項が含まれています。
    (IFRS S1号のコア・コンテンツ以外の定めに相当)

  • 一般開示基準
    気候関連以外のサステナビリティ情報の開示内容を定めています。具体的には、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標のコア・コンテンツに基づいて、企業が開示すべき情報を規定しています。
    (IFRS S1号のコア・コンテンツの定めに相当)

  • 気候関連開示基準
    気候変動が企業の財務状況や事業活動に与える影響に関する情報の開示を求めています。具体的な要求事項としては、気候関連リスクと機会の特定と評価、シナリオ分析、温室効果ガス排出量(スコープ1,2,3)の開示が含まれます。
    (IFRS S2号の定めに相当)

また、3月17日にはSSBJ基準検索システム「ASSET-SSBJ」が公開され、3つの基準を横断してキーワードで最新の情報を検索できるようになっています。

参考:
サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準を公表
ASSET-SSBJ(SSBJ基準検索システム)

SSBJの適用対象企業

SSBJのユニバーサル基準の文書(P29)で適用対象企業について、東京証券取引所プライム市場上場企業が適用することを想定して開発されていると明記されています。金融商品取引法の枠組みで今後SSBJ基準が適用される予定で、金融庁の金融審議会では下記のような段階的な適用案が示されています。

  • 2027年3月期:時価総額3兆円以上の企業
  • 2028年3月期:時価総額1兆円以上の企業
  • 2029年3月期:時価総額5,000億円以上の企業
  • 2030年以降:その他のプライム上場企業

参考:金融庁 金融審議会 事務局説明資料(2024年5月14日)

財務諸表の関連性や比較情報の開示の定め

SSBJでは、サステナビリティ関連財務開示にあたり、関連する財務諸表を補足・補完するものと定義されています。そのため、SSBJ基準開示が財務諸表との関連性を持つ形式となるように、財務諸表と同じ報告期間を対象とし、同時に報告することが定められています。

また、報告対象期間におけるすべての数値について、前期との比較情報の開示まで求められます。

適用時期と経過措置

SSBJの適用時期は、公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から任意に適用することが可能ですが、今後金融庁が強制適用の時期を法令で定めることが見込まれます。

なお、SSBJの各開示基準の文書には、最初の年次報告期間に限り適用される経過措置が記載されています。これらの措置は適用初年度のみに認められ、2年目以降は適用されません。

  • 比較情報を開示は不要
  • 「気候関連開示基準」に準拠し、気候関連のリスクおよび機会に関する情報開示のみでよい
  • 前年度にGHGプロトコル(2004年版)や規制当局、上場取引所が指定する方法以外で温室効果ガス排出量を測定していた場合は、同じ方法を引き続き使用できる
  • スコープ3の温室効果ガス排出量については、開示を省略できる

参考:
サステナビリティ開示ユニバーサル基準
サステナビリティ開示テーマ別基準第 2 号 気候関連開示基準

TCFDとの違い

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TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、2015年にG20の要請を受け設立され、気候変動がもたらす財務リスクに関する情報開示の提言を2017年に発表しました。企業に対し「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に基づいた情報開示を推奨するもので、多くの企業が賛同し活用してきました。
2023年にTCFDの役割はISSBに統合されましたが、TCFDの提言はISSBのIFRSサステナビリティ開示基準(IFRS S1号およびS2号)の基礎となっており、その重要性は現在も継承されています。

SSBJの基準は、TCFDの4つの柱を踏襲しつつも、より詳細かつ厳格な情報開示を求める点で以下のような違いがあります。

  • スコープ3排出量の開示義務化:​TCFDでは「該当する場合」に限られていたスコープ3の排出量開示が、SSBJ基準では義務付けられています。
  • 財務諸表との統合開示:​従来の統合報告書やサステナビリティ報告書の一部としてではなく、財務諸表と統合された形での開示が求められます。
  • 開示作業の負担増加:​財務報告レベルの精度や会計監査との整合性が必要となり、企業の開示作業の負担が大きくなると予想されます。
  • 第三者保証の導入:開示情報の信頼性を高めるため、第三者による検証(アシュアランス)の導入も議論されており、情報の正確性と信頼性が一層重視されるようになります。

これらの点から、SSBJ基準はTCFDよりも厳格な開示と信頼性確保の措置が追加されていると言えるでしょう。

また、TCFDは東京証券取引所プライム市場の上場企業に対し、実質的に義務化されていたものの、自主的な情報開示の枠組みにとどまっていました。一方で、SSBJ基準は金融商品取引法に基づく法的枠組みに組み込まれることが想定されており、上場企業を中心に段階的に義務化される予定です。

すでに多くのプライム市場上場企業がTCFDに基づく情報開示を進めていますが、今後はSSBJ基準への本格的な対応が求められます。2027年3月期から段階的な義務化が始まる見込みであり、より詳細なデータ収集と開示体制の整備が急務となっています。

参考:
TCFD - Task Force on Climate-related Financial Disclosures
TCFDコンソーシアム


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