日本・世界のカーボンフットプリントの重要性や義務化の流れ、計算方法とポイント、Terrascope(テラスコープ)のツールを活用したポッカ社など大手企業のCO2排出量の計測・削減事例をご紹介します。
目次
- カーボンフットプリント(CFP)とは
- 日本でのカーボンフットプリントの対応の必要性・義務化
- カーボンフットプリントマークの取得について
- カーボンフットプリントの計算方法
- カーボンフットプリント計算のデメリット・課題
- カーボンフットプリント計算の企業事例
- Terrascope(テラスコープ)ツールの排出量計算・削減支援
カーボンフットプリント(CFP)とは
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品の原料調達・生産・流通・使用・廃棄までライフサイクルアセスメント(LCA)で温室効果ガスの排出量を評価する方法です。
2018年版「ISO14067」には、「気候変動への影響に関するライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、当該製品システムにおけるGHGの排出量から除去・吸収量を除いた値を、CO2 排出量相当に換算したもの」と定義されています。
ライフサイクルアセスメントとは、製品が生産される前から廃棄までの各段階における一連の工程でCO2排出量を評価する手法です。
■各ライフサイクルで発生するCO2の例
原材料調達 | 製品に使用する資源の採取、部品の生産など |
生産 | 製品の製造、パッケージングなど |
流通 | 工場から消費者間の輸送、店頭での保管維持など |
使用 | 製品の使用、維持など |
廃棄 | 廃棄物の回収、リサイクル処理など |
従来は事業者が製品を生産する工程でのCO2排出量に重点を置いていましたが、カーボンフットプリントの考え方は、すべてのプロセスにおけるCO2排出量を評価することを目的としています。
例えば同じお店に並んでいるお茶であっても、ペットボトルに入ったものと紙パックに入ったものでは、容器の製造や廃棄にかかるCO2排出量に違いがあります。
製造やリサイクルが容易な容器に入ったお茶の方が、カーボンフットプリントを算定した時にCO2排出量が少なくなるため、環境意識の高い消費者は同じお茶であってもよりCO2排出量の少ない商品を選択できます。
それにより事業者は、カーボンフットプリントが少ない商品を生産する必要が発生するため、社会全体としてCO2排出量の少ないシステムへ移行していくことが可能になります。
カーボンフットプリントの詳しい定義については、経済産業省・環境省が作成したガイドラインに詳しく掲載されています。
日本でのカーボンフットプリントの対応の必要性・義務化
地球温暖化が進むにつれて、脱炭素化のためにカーボンフットプリントに取り組む必要性は世界中で高まってきています。
世界各国で深刻な異常気象による被害や、自然災害の発生が増加しており被害総額は増大を続けています。
さらに今後世界人口の増加や発展途上国の工業化などが進むと、CO2排出量は成り行きで増加していくことが予想できるため、CO2排出量削減に世界各国が真剣に取り組むことが求められます。
その中で日本は2050年までにカーボンニュートラル実現を公表しており、今後国内企業は高いCO2削減目標を持った活動が求められます。
産業界は単に自社の利益を追求するだけでなく、自社製品の環境負荷を減らす取り組みを同時に進めることが必要となります。
つまり企業の成長を継続させるためには、カーボンフットプリントで製品のCO2排出量算出を行い、ライフサイクルアセスメントによる評価が不可欠となります。
また日本企業の中でも、欧州をはじめとする海外企業と取引をする企業では、カーボンフットプリントを積極的に取り入れる必要があります。
欧米では戦略的にカーボンフットプリントに取り組む企業が増えており、自社製品に使用する材料や部品の調達先企業に対しても、自社と同様の取り組みを要求してくる機会が増えています。
実際に2023年10月からはEUへ製品を輸出する企業は、カーボンフットプリントを報告することが義務化され、2026-2027年からはカーボンフットプリントに対して一定の課税額を徴収されることが予定されています。
カーボンフットプリントマークの取得について
カーボンフットプリントマークとは、対象の商品がライフサイクルアセスメントで発生するCO2量を数値で表示したマークのことです。
「カーボンフットプリントマーク」を取得すると、消費者に対してCO2排出削減に取り組んでいることをアピールすることができます。
また消費者が商品を購入するときに、CO2排出量が少ない方の商品を判別できます。
数字の大小で製品の優劣が決まるわけではありませんが、環境意識の高い消費者から選ばれやすくなるメリットがあります。
カーボンフットプリントマークは、カーボンフットプリントへの登録申請を受理されると取得することができます。
カーボンフットプリントマークは第三者機関が、申請者が提出したカーボンフットプリントの算定結果を審査して問題がない場合に送付されます。
カーボンフットプリントの算出方法は「食品」「電子機器」「住宅設備」など種別によって算定ルールが分かれています。
計算方法が複雑なため、詳しい内容については後述します。
カーボンフットプリントの計算方法
カーボンフットプリントマークの計算には様々なルールがあります。
商品の原材料調達から廃棄・リサイクルされるまでの、5つの工程すべてで排出されるCO2が対象となります。
それらのCO2排出量の合計を求める計算式は以下の通りです。
CO2排出量=Σ(活動量×CO2排出原単位)
活動量とCO2排出原単位とは何か、実際の組み合わせ例は以下の通りです。
原材料調達 | 原材料の使用量 × 原料1kg当たりのCO2排出量 |
生産 | 商品生産時の消費電力 × 消費電力1kWh当たりのCO2排出量 |
流通 | 商品の輸送量 × 商品1kgを1km輸送するときのCO2排出量 |
使用 | 商品使用時の消費電力 × 消費電力1kWh当たりのCO2排出量 |
廃棄 | 商品の焼却量 × 商品1kg当たりのCO2排出量 |
それでは計算例を紹介します。
例えばある電化製品を使用したときの、活動量とCO2排出原単位は以下のようになります。
(1)活動量 | 使用時の電力消費量(kWh)=4.0kWh |
(2)CO2排出原単位 | 消費電力1kWh当たりのCO2排出量=455g-CO2eq/kWh |
[計算] | 活動量 × CO2排出原単位=4.0×455=1,820g-CO2eq |
カーボンフットプリントの算出では、商品生産者が直接計測した1次データを用いると、より正確な計算結果を求めることが可能です。
しかし実際には別のデータベースによる2次データを用いた計算が主流となっています。
活用するデータベースの代表例には以下の2つがあります。
商品種別算定基準 (Product Category Rule:PCR) |
インターネット上で公開されたカーボンフットプリント算出用2次データ |
原単位データベース | 国が整備したライフサイクルアセスメントデータベースを基に作成・管理された2次データ |
これらのデータベースを基にカーボンフットプリントを算出した場合、各企業が行ったCO2削減効果が反映されないデメリットがあります。
例えば原材料メーカーが自主的にCO2削減に取り組んだとしても、商品のカーボンフットプリントの算出に適合されないため、正当な評価が行われない恐れがあります。
カーボンフットプリント計算のデメリット・課題
カーボンフットプリント導入におけるデメリットや課題を紹介します。
(1) CO2排出量の算出に手間がかかる
カーボンフットプリントのルールに従って、CO2排出量を算出するには相当の労力が必要になります。
材料の調達先や、流通業者、廃棄処理業者などの取引先からデータを取得するにも、データが未整備であれば収集作業は困難になります。
また中小企業のように限られたリソースしかない企業では、大企業と異なり多くの工数を避けないのが現状です。
(2) 算出ルールが完全に整備されていない
カーボンフットプリントでCO2排出量を算出するときに、製品カテゴリールールや業種別のガイドラインがない分野が存在します。
その場合はISO14067や「GHG Protocol Product Standard」のデータを参照しますが、必ずしもすべての業種に適用できるとは限りません。
算出する企業の担当者の裁量により、算出結果にばらつきが発生する恐れがあります。
(3) 調達や物流ルートが開示されてしまう
カーボンフットプリントでは原材料メーカーや流通経路などの情報が必要になります。
算出結果を開示した場合に、それらの情報が公開されて他社と比較される可能性があります。
情報によっては企業の製品競争力に影響があるため、開示情報には注意が必要となります。
(4) 算出だけではCO2排出量削減が進むわけではない
カーボンフットプリントはCO2排出量を把握する手段として有効ですが、算出しただけでは排出量削減にはつながりません。
ただしカーボンフットプリントは、どの工程でCO2排出量削減が可能か検討する材料として活用することが可能です。
実際にCO2排出量を削減するには、商品の使用原材料、生産工程や流通方式などを見直す必要があります。
カーボンフットプリント計算の企業事例(飲料食品メーカー「ポッカ」)
前述したようにプリントの算出は、正確さを求めるとデータの精査に工数が取られてしまい、反対に工数をかけずに簡易的に算出すると正確さが損なわれてしまう問題があります。
こうした問題に対して、一つの解決法として外部サービスを利用するという選択肢があります。
ここからは「Terrascope(テラスコープ)」のツールを活用し、実例を通して、カーボンフットプリント算出の課題に取り組んだ飲料食品メーカーの企業の事例をご紹介します。
■ポッカ社のCO2排出量・カーボンフットプリント測定の課題
缶コーヒーや清涼飲料水などの飲料食品メーカーとして有名な「ポッカ」は、CO2削減のために商品の加工方法や容器原料の改良、流通経路や工場設備などに取り組んできました。
一方で課題として、企業のCO2排出量85%以上を占める「スコープ3」については、SKUレベル(製品別)の排出量などの正確なデータを収集することが困難になっていました。
その理由は複雑な商品流通経路や、複数の商品を扱っていることで原材料や製造プロセスが煩雑になっていることでした。
■Terrascopeを活用した排出量測定と効果
その課題に対してポッカでは、CO2排出量を測定・管理・最適化するためのツール「Terrascope」を採用して、効率的な解決に取り組みました。
Terrascopeでは独自の機械学習機能を用いたデータ解析により、3週間という短期間で(ポッカの解析期間の1/5)データの取り込みを完了させました。
特にポッカが自社で解析が困難と考えていたスコープ3のCO2排出量について、Terrascopeではマシンラーニングを用いて構成要素を分解し、実際のサプライヤーデータの92%以上の精度で算出することを可能にしました。
またポッカではTerrascopeを採用したメリットとして、これまで気づかなかった自社のCO2排出の課題に気づいた点を挙げています。
例えば商品のパッケージや、生産地に起因するCO2排出量が想定より多かったことが分かり、今後の改善テーマとなることを発見することができました。
このようにカーボンフットプリントの算出に、外部サービスを利用することで最適化を実現する企業も現れています。
(事例ページ:食品業界・ポッカのカーボンフットプリント測定・削減の取組み事例 )
■その他の企業のCO2計算/削減・カーボンフットプリント事例
三菱商事アグリアライアンス
Terrascopeツールを活用し、排出量ホットスポットを特定し、スコープ3排出量の包括的なベースラインの構築を達成。スコープ3排出量の25%削減の可能性と、サプライチェーンコスト削減の可能性の把握が可能となりました。
三菱食品株式会社
「炭素価格の導入」が食のサプライチェーンへ大きな影響をもたらすとの分析から、早期にScope3の可視化へ着手。Terrascopeの機能で膨大なデータの分類・計測が可能となりました。
Princes Group(英国の大手食品飲料企業)
持続可能性を重視する顧客とEUで厳格化された規制に備え、主要製品のカーボンフットプリント・排出量測定に取組みました。排出量の99%を占める上位30の活動を特定し、Terrascopeの5倍もの高速なデータ取込みプロセスにより、タイムリー且つデータ主導の意思決定のもと、脱炭素化への取組みを前進させています。
(事例ページ:Princes Group)
Terrascope(テラスコープ)のシステムを活用する日本国内・海外の様々な有数企業のカーボンフットプリント、脱炭素化・CO2排出量の計算・削減の成功事例については、脱炭素化の支援・取り組み事例のページをご確認ください。
Terrascope(テラスコープ)ツールの排出量計算・削減支援
Terrascopeのプラットフォームでは、カーボンフットプリント測定や、CO2削減の取り組みなど、下記それぞれのプロセスをサポートする機能と、サステナビリティ専門家とカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供しています。
- 排出量の測定
- 削減計画・目標設定と実行
- 報告作業の簡素化
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