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コンパス #5:パリ協定とは?米国の離脱・復帰の歴史と企業が今取るべき対応

作成者: Terrascopeチーム|2025/26/06

こんにちは、マーケターのアミーゴです。
この連載「コンパス」では、私が社内で得た気づきや情報を皆さんと共有し、脱炭素化を目指す企業のヒントになればと思っています。

さて、2025年に再びホワイトハウスへ戻ることになったトランプ大統領。彼は2017年にパリ協定を離脱し、環境規制の大幅な緩和を進めました。今回の再選により、米国の気候政策は再び大きな転換点を迎えています。

今回のコンパスシリーズでは、米新政権の気候政策の変化を整理し、国際社会の反応や企業の対応策を4回にわたり解説します。

 

目次

  1. 米新政権によるパリ協定「再離脱」

  2. パリ協定とは? 京都議定書との違いと歴史的背景

  3. 米国のパリ協定離脱と復帰の歴史

  4. 米国の離脱はパリ協定に影響を与えるのか?

  5. まとめ:世界の動向に企業はどう対応すべきか?

 

 

 

米新政権によるパリ協定「再離脱」

2025年1月20日、米国政府はパリ協定からの再離脱を宣言しました。2017年にも同様の決定が下されましたが、2021年にはバイデン政権の下で復帰。この「離脱と復帰」の繰り返しは、米国の気候政策の不安定さを象徴しています。

しかし、世界の脱炭素の流れは止まりません。
パリ協定はすでに各国や企業の基準となっており、米国の動向に関わらず、企業は長期的な視点で気候変動対策を進める必要があります。

 

 

パリ協定とは? 京都議定書との違いと歴史的背景

パリ協定は、2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択された地球温暖化対策の国際ルールです。その最大の目標は、「地球の気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満、可能なら1.5℃に抑えること。
パリ協定は、京都議定書の課題を克服し、より多くの国が参加する柔軟な仕組みを持つことで、脱炭素の世界的な推進力となっています。

京都議定書とパリ協定の違いのまとめ

 

京都議定書(1997年)

パリ協定(2015年)

対象国

先進国のみ

すべての締結国

削減義務

先進国に法的義務あり

各国が自主的に「国が決定する貢献(NDC)」を設定

仕組み

排出量取引制度など

5年ごとの目標見直し

参考:第1節 温暖化をめぐる動き - 資源エネルギー庁


米国のパリ協定離脱と復帰の歴史

① 2017年:トランプ政権の離脱発表

「パリ協定は米国の経済と雇用に悪影響を及ぼす」として正式に離脱。特に、石炭や石油産業を保護し、エネルギー政策の自由度を高めることを目的としていました。

② 2021年:バイデン政権の復帰

就任直後にパリ協定へ復帰し、2030年までに温室効果ガスを2005年比で50~52%削減する目標を掲げました。これは、米国企業にとってもサプライチェーンの脱炭素化や、炭素コストを考慮した経営を求める重要な転換点となりました。

③ 2025年:トランプ大統領の再離脱宣言

再選を果たしたトランプ氏は、「米国第一主義」の復活を掲げ、パリ協定からの再離脱を表明。国内産業の競争力維持を理由に、化石燃料産業への規制緩和や、環境政策の見直しを進めるとしています。また、中国などの新興国に対する排出削減義務の不公平さを強調し、米国が過度な負担を負うことを回避する狙いもあるとみられます。

 

米国の離脱はパリ協定に影響を与えるのか?

米国政府の決定によって、パリ協定が弱体化するという見方もあります。しかし、世界の脱炭素政策はすでに加速しており、米国の動向に関わらず、各国や企業が主体的に取り組みを進めています。

  • EU・中国・日本は脱炭素を強化し、カーボンプライシングを推進
    EUは「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」を導入し、中国も再生可能エネルギーへの投資を加速しています。日本も企業の温室効果ガス削減を促進する政策を進めており、脱炭素への取り組みが求められています。
    また、CBAMによって米国企業も炭素コストを考慮せざるを得なくなり、炭素排出量が多い企業は国際競争力を失うリスクが高まります。これらのことより、米国が離脱しても脱炭素の流れは維持されると考えられます。

  • 米国内でも州政府・大手企業が独自の脱炭素を推進
    カリフォルニア州をはじめとする州政府や、アマゾン、マイクロソフトなどの大手企業は、連邦政府とは別に独自の脱炭素目標を設定しています。パリ協定からの米国離脱後も、州や企業レベルでの環境対策は継続されるでしょう。

これらの動きにより、米国がパリ協定を離脱しても、脱炭素の流れが後退することはないと考えられます。

参考:EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)(2024年2月)|JETRO

 


まとめ:世界の動向に企業はどう対応すべきか?

米国のパリ協定からの離脱は短期的には影響を与えるものの、世界の脱炭素トレンドは後戻りしないと考えられます。企業にとって重要なのは、一時的な動向に左右されず、長期的な視点で気候変動対策を進めることです。今こそ、確かなデータと戦略をもとに、一歩先を行く取り組みを始めましょう。

米国のパリ協定離脱後も、世界の脱炭素化の流れは加速しており、多くの企業が対応を進めています。実際にどのような取り組みが行われているのか、詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
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今後のコンパスでは、米国政府の政策がどのように展開されるのか、また企業がどのような戦略を取るべきかについて、引き続き分析していきます。次回は「米新政権がパリ協定の再離脱を決めた理由」について詳しく解説します。