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気候変動への対応

1 27, 2025

世界の二酸化炭素削減の取り組みとTerrascopeを活用する海外企業の事例

2024年の世界の平均気温は、工業化以前と比べて初めて1.5℃以上高くなったことを、EUの気象情報機関が発表しました。 気温上昇が1.5℃を超えると、気候変動による影響がはるかに深刻になると予想されており、二酸化炭素排出削減がこれまで以上に求められている現状です。 今回は、世界各国の二酸化炭素排出削減目標と取り組み、海外企業の事例についてご紹介します。

 


目次

  1. 二酸化炭素を含むGHG排出量の削減目標

  2. 世界の国々の二酸化炭素削減の取り組み状況

  3. 海外企業の二酸化炭素削減の取り組み事例

  4. Terrascopeを活用する世界の有数企業の二酸化炭素計測・削減事例

  5. TerrascopeのCO2排出量計算・削減支援システム

 

 

二酸化炭素を含むGHG排出量の削減目標

2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みが、パリ協定です。パリ協定は、2015年の国連気候変動枠組条約COP21で採択されました。

パリ協定は、条約に加盟する196か国全てが参加する、歴史上はじめての公平な合意です。世界共通の長期目標として、平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することを掲げています。

さらに目標としているのが、今世紀後半にGHG排出と吸収源による除去のバランスをとり、排出量差し引きゼロを達成するカーボンニュートラルです。

主要排出国を含む全ての国は、パリ協定のもと削減目標を5年ごとに提出・更新することが求められています。

国名 GHG排出削減目標(NDC)
日本 2030年度までに2013年度比で46%削減
米国 2030年までに2005年比で50~52%削減
中国 2030年までにGDP当たりのCO2排出を2005年比で65%超削減
EU (仏・伊) 2030年までに1990年比で55%削減
ドイツ 2030年までに1990年比で65%削減
豪州 2030年までに2005年比で43%削減

各国が国連へ提出しているGHG排出削減目標(NDC)は、残念ながら、全て合わせても地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるには低すぎる現状です。

また、2023年に発表されたIPCC第6次評価報告書では、2035年までにGHG排出量を2019年比で60%削減する必要があるとされています。

2024年11月に開催されたCOP29では、各国がこれらを踏まえて目標を再検討し、2035年の次期NDCとして提出することが確認されました。

参考:
2024年世界の平均気温 抑制目標の「1.5度」初めて超える - BBCニュース
パリ協定 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
COP29結果報告 |WWFジャパン
各国における気候変動対策・エネルギー政策の進捗と今後の対応 - 経済産業省 資源エネルギー庁
Climate Watch - Custom comparison

 

世界の国々の二酸化炭素削減の取り組み状況

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各国はNDC達成にむけ、GHG削減を推進する取り組みを政策に盛り込んでいますが、なかでも注目すべきものを下記にご紹介します。

【米国】インフレ削減法(Inflation Reduction Act)

2035年に電力セクターの脱炭素化を実現することを目指し、2022年にインフレ削減法が成立しました。インフレ削減法は、次の4つを目標としています。

  • 家庭と企業のエネルギーコスト低減
  • すべての地域とすべての産業セクターにおいてクリーンエネルギーの投資を加速
  • クリーンエネルギーに必要な希少鉱物から高効率機器まで、すべてのサプライチェーンを強化
  • 労働者の収入を改善する新たな機会を創出

政策の後押しを受けて太陽光発電と陸上風力発電のコスト競争力が向上し、経済的に有利になりました。その結果、電力消費量に占める脱炭素エネルギーの比率は2010年の10%から2023年の23%へと2倍以上となっています。

参考:米国の電力は2035年までに脱炭素へ - 自然エネルギー財団


【ドイツ】脱石炭・脱原発と脱炭素エネルギーの拡大

ドイツは、高い脱炭素目標を掲げ、急速に導入が進んできた再生エネルギーの割合をさらに高めていく方針を示しています。2023年に改正された再エネ法では、その導入目標を80%へと引き上げました。

原子力発電については、2002年以降は脱原子力の方針で、2023年4月には最後まで残っていた3基の原子炉が閉鎖され脱原子力が完了しています。

なお、原子力発電の割合が減少するペースよりも、再生エネルギーの割合が増加するペースの方が早かったことから、非化石電源比率は2019年以降50%を超えていました。

石炭火力の割合は、1990年の電源構成に占める割合は59%でしたが、2021年には30%にまで低下しました。2038 年までに脱石炭を完了することを目標とし、脱石炭の影響を受ける若い労働者向けに、職業訓練の提供も提言しています。

参考:ドイツの脱炭素戦略 - 自然エネルギー財団

【中国】カーボンプライシング導入

2013年よりパイロット事業として一部地域で開始されていた排出権取引が、2021年7月から全国炭素排出権取引制度(全国ETS)として正式に運用を開始しました。この制度では、政府が重点排出事業者に指定した発電事業者が、政府により割り当てられた炭素排出枠(CEA)を取引します。

また、事業者が自主的に参加できるのがカーボンクレジット制度です。再生エネルギー、炭素隔離、メタン排出削減、省エネルギー効率の向上などの事業によって生じたカーボンクレジットを政府が排出削減量としてクレジット認証しています。

2022年10月に可決されたGHG自主的排出削減取引管理弁法(試行)により、全国統一の登録・取引システムが構築されることになっています。

参考:
カーボンニュートラル実現に向けた中国の政策および動向 - ジェトロ
法的対応必要な排出権取引市場の整備が進展、CCER再始動に期待 - ジェトロ


【豪州】CCS・CCUSを推進

脱炭素技術の1つとして、二酸化炭素を回収し地中に貯留するCCSやCCUS技術の導入・検討が進められています。

一般に二酸化炭素貯留は枯渇したガス田に圧入して行いますが、豪州は長年ガス田を開発してきたため関連インフラが既に存在し、CCSやCCUSに適した場所が少なくありません。

さらに、二酸化炭素貯留に適した帯水層が多くあり、地震がなく、天然資源に関わる地質学データが豊富な点、CCSに関連する法律が整備されていることもメリットです。

2023年11月時点で、豪州国内では20件の地中・海洋のCCS・CCUSプロジェクトが計画されています。州政府が実施するもののほか、日本の石油・ガス大手が出資する事業もありますが、実際の稼働は2020年代後半以降に予定されている場合がほとんどです。

参考:カーボンニュートラル達成へCCSやCCUSを推進(オーストラリア) - ジェトロ

 

 

海外企業の二酸化炭素削減の取り組み事例

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企業が自主的に設定するGHG排出削減目標に関する国際的なイニシアチブの1つが、SBT(Science Based Targets)です。なかでも、厳しい基準であるネットゼロ認定を受け、GHG排出実質ゼロに向けて取り組む先進的な企業をご紹介します。

ネスレ

スイス発祥の食品メーカーであるネスレは、2050年カーボンニュートラルを目指しています。

排出量の削減の取り組みとして、まず、2022年までに主要原材料の調達に関する森林破壊を根絶し、車両を排出量の少ない選択肢に切り替えるとしています。

2025年までに187か国の全ての拠点で100%再生可能エネルギーに切り替え、包装プラスチックを3分の1削減し、キットカットをカーボンニュートラルにする計画です。

また、2030年までに主要原材料の50%を再生農法で調達し、2億本を植林するほか、カーボンニュートラルなブランドの数を増強するとしています。

さらに、高度な農業技術により、ゼロエミッションの物流と企業運営による再生食品システムを実現します。それでも残る排出量については、質の高い自然プロセスによる炭素除去によって相殺する計画です。

参考:Net Zero Roadmap | Nestle International Travel Retail

テスコ

英国の小売大手であるテスコは、2021年に気候変動対策マニフェストを発表しました。エネルギー効率性改善や、低炭素化イノベーションの推進を通じ、2015年比で二酸化炭素排出量50%削減に成功しています。

二酸化炭素排出量を削減するため、2030年までに世界中での事業電力を全て再生可能エネルギーへ転換する計画です。また、再生可能エネルギー分野の投資家とともに、英国での太陽光発電所と風力発電所の建設プロジェクトを展開していきます。

輸送用の電気自動車(EV)30台を導入することを皮切りに、2028年までに全輸送用バンをEVに転換する予定です。同時に、テスコ小売600店舗にEV充電スタンド合計2,400機設置する計画で、同アクションがすべて完了すると、英国でのEV充電ステーションが14%向上します。

また、英国内では可食部での食品ロスをゼロにすることを宣言しました。さらに、2025年までに植物由来の代替肉の売上を4倍に増やし、2030年までに製造プロセスでのGHG排出量を35%削減、原材料生産の農業での排出量を15%削減するとしています。

参考:Tesco sets out its climate “manifesto” ahead of crucial COP26 Conference in Glasgow

OpenX Technologies, Inc.

OpenX Technologies Inc. は、米国カリフォルニア州に本社を置くテクノロジー企業で、広告技術業界で初めてGHG排出量実質ゼロを実現した企業です。2018年を基準年として、2021年までにGHG排出量を約96%削減し、2022年にもネットゼロ目標を達成しています。

二酸化炭素排出削減のため、再生可能エネルギーを使用した高効率のクラウドベースプラットフォームにデータセンターを移行しました。また、リモートワークを推進しオフィススペースの削減したほか、出張の全般的な見直しなども行っています。

さらに注力しているのが、デジタル広告取引におけるCO₂排出量の計測と削減です。デジタル広告の過程では、データの処理やコンテンツ配信でのサーバー稼働、膨大な通信量などで多大なエネルギーを消費しています。

特に日本では、広告の配信先やクリエイティブを多様化して広告効果を高める手法により、デジタル広告活動のGHG排出量は増加傾向です。

OpenXは広告配信に伴うGHG排出量を計測し、環境負荷の低い広告設計を提案するサービスを日本印刷(DNP)とともに開始し、広告業界の脱炭素化に貢献しています。

参考:
OpenX Achieves SBTi Net-Zero Standard Requirements
OpenXと協業し、企業のデジタル広告取引におけるカーボンニュートラルを支援

関連記事:企業のCO2削減の最新取り組み事例・TerrascopeのCO2排出量計算・削減機能の特徴

 

Terrascopeを活用する世界の有数企業の二酸化炭素計測・削減事例

Terrascope(テラスコープ)は、企業のCO2などのGHG排出量の計測と削減を支援するSaaSプラットフォームのシステムを提供しています。データサイエンスやAI(特に機械学習)を活用し、企業のGHG排出量の測定、削減計画の策定、実施をサポートし、世界の有数企業で脱炭素化の取り組みを下支えします。

具体的な機能として、CO2排出量データの迅速な測定・収集、データの妥当性評価、重点的な取り組みが必要なホットスポットの検出、リアルタイムの進捗管理、情報共有が挙げられます。さらに、AIを活用して最適な次のアクションを提示し、その効果性をシミュレーションします。

これらの機能により、企業は脱炭素化への取り組みを効果的かつ効率的に進めることが可能となっています。

Greenfields:農業・食品業界の排出要因の分析・削減事例

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インドネシアの乳製品大手Greenfieldsは、脱炭素化・サステナビリティの課題に積極的に取り組んでいます。競合他社とのベンチマーク、ホットスポットの特定、排出量削減のシミュレーション、コスト便益分析などに必要なものがスコープ3排出量のベースラインであることを認識し、それらの分析機能と企業の支援事例が豊富なTerrascopeを採用し、取り組んできました。

 

Terrascopeを活用することで、メタン排出を含むスコープ1、2、3の排出量に対応する包括的なベースラインを確立し、乳製品の生産における各段階の主要な排出要因の特定といった分析を可能としました。

また、調達、腸内発酵によるメタン排出、糞尿管理、輸送・流通までのプロセスにおける排出量削減方法をモデル化し、代替調達によって牛飼料の排出量を50%以上削減できる施策の可能性など、効果的な削減機会の発見に繋げています。

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TerrascopeのAIを活用したデータ管理や自動分類機能により、精度の高い分析が可能になり、コスト削減と排出量削減の両立を実現しました。

Terrascopeの企業事例:Greenfields - 乳製品バリューチェーンにおける排出量計測と削減事例

 

Princes Group:食品・飲料業界の調達戦略・排出量削減の事例

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英国に本社を置く大手食品会社のPrinces Groupは、持続可能性を重視する英国のスーパーマーケットの透明性要件やEU規制への適合を目指し、製品のカーボンフットプリント・排出量測定に取り組んでいます。

これに対応するため、企業レベル・製品レベルの排出量を効果的に測定・管理するため、Terrascopeのシステムを採用しました。

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システムの利用と分析を通じて、下記のような成果を上げています。

  • わずか8週間でスコープ1、2、3の排出量を包括的に測定
  • 全製品ポートフォリオの高精度な排出量推定
  • 総排出量の99%を占める上位30種類の事業活動を特定

スピーディーかつ高精度の分析の結果から、2つの食肉原料が総排出量の23%を占め、それらの排出係数が他の原材料と比較して実に17倍もの数値であることを把握しました。これらの原材料に関連する排出量を削減するために調達戦略を模索し、サプライヤーと連携して排出量削減に取り組む具体的な施策へと繋がっています。

Terrascopeの企業事例Princes Group- 企業・製品レベルの排出量測定と削減施策事例
関連記事:CO2排出量の計算方法・ツール・Terrascope活用企業の事例

 

TerrascopeのCO2排出量計算・削減支援システム

Terrascopeのシステムでは、二酸化炭素排出量の計測や削減施策などの脱炭素化のそれぞれのプロセスをサポートする機能と、サステナビリティ専門家やカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供しています。

  • AIを活用したデータ管理
  • CO2排出量などの測定計算と分析
  • 削減計画・目標設定シミュレーション
  • 削減施策のモニタリング・レポートの簡素化

機能の無料デモやご相談をお受けしていますので、下記フォームからお問合せください。

Terrascope Japanの担当者が、プラットフォーム・ツールのご紹介、サポート・コンサルについてのご説明や、まずはお気軽な相談などにもご対応させて頂きます。

 

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