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12 25, 2024

農業における脱炭素化:企業の取組みやTerrascopeの成功事例を紹介

全世界で排出される温室効果ガスの約4分の1(22%)は、農業、林業および関連する土地利用に起因しています。その割合は、エネルギー部門(34%)、産業部門(24%)に次ぐ第3位です。2050年カーボンニュートラルが世界の共通目標となった今日、温室効果ガス削減が求められるのは農業分野も例外ではありません。この記事では、農業関連の温室効果ガス排出を削減する重要性や課題、最新の技術についてご紹介していきます。

 

 


目次

  1. 農業における脱炭素化の重要性と課題

  2. 農業分野のカーボンニュートラル取組み事例

  3. 農業機械の脱炭素化・カーボンニュートラル事例

  4. Terrascopeを活用する農業分野の企業の脱炭素化事例

  5. 農業分野の脱炭素化を支援するTerrascopeシステム

 

 

 

農業における脱炭素化の重要性と課題

温室効果ガス総排出量のうち農林水産分野が占める割合は、国内では約4%ですが世界的にみると総排出量の22%にのぼり、大きな排出要因となっています。
参考:農林⽔産分野における地球温暖化に対する取組(農林水産省)

国連の推計によると、世界の人口は2050年に97億人にまで増加すると予測され、農業は食糧生産に直結することから、今後も排出量の増加は避けられません。

農業において、温室効果ガスが排出される活動は多岐に渡ります。

  • 水田からのメタン排出
  • 農地や林地での肥料の使用と堆肥の生産によるメタンおよびN2O排出
  • 家畜の飼養によるメタンおよびN2Oの排出
  • 機械や設備の利用によるCO2排出

上記のそれぞれの活動において、いかに排出量を削減していくかが課題となっています。また、森林は大気中からCO2を固定する重要な吸収源ですが、森林を伐採し農地やプランテーションに改変することによりCO2排出が増加していることも懸念事項です。

さらに、農業分野の温室効果ガス排出量の正確な把握も課題の一つとなっています。排出量の算定において用いられるのが、国際的な基準であるGHGプロトコルが定める活動ごとの算定式と排出係数です。

しかし、農業に関わる活動は、その時々の環境条件によって作物や土壌微生物の反応が左右されるため、固定された排出係数では実際の条件を反映できません。

一方、工場で排出される温室効果ガスの計測とは異なり、野外において生物を相手にする農業分野では、正確な計測も困難です。排出量を実際に測定するには、測定器の開発や測定ノウハウの確立が必要であり、時間とコストがかかってしまいます。

以上のように、農業分野における温室効果ガス排出削減は、解決すべき課題を抱えながらも、実効性のある対策が急務となっています。

関連記事:農業が地球温暖化に与える影響とは?温室効果ガス排出の現状と課題

 

 

農業分野のカーボンニュートラル取組み事例

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国は、農業分野の競争力強化、地域活性化と脱炭素を両立するために野心的なビジョンとして「脱炭素化社会に向けた農林水産分野の基本的考え方」をまとめました。
参考:脱炭素化社会に向けた農林水産分野の基本的考え方(農林水産省)

この中では、生産プロセスの脱炭素化、農地・畜産からの排出削減対策、海外の農林水産業の排出削減への貢献などが施策の方向性としてあげられています。

現在、農業分野における脱炭素にむけての研究や技術開発は、官民を問わず進行中です。ここでは、実用化されている事例をいくつかご紹介していきます。

  • 水田中干し
    稲作のために水を貯めた状態の水田は、メタン生成菌が好む嫌気的な土壌環境です。メタン生成菌が水田の土壌中の有機物を分解することにより、メタンが発生します。
    特に稲作由来のメタン排出量が多いのは水稲栽培が盛んなアジア地域で、メタンはCO2の28倍の温室効果をもつため、アジア地域全域での確実な対策が必要です。
    水田からのメタン発生を減らすには、水田の栽培中に水を抜いて田面を乾かす「中干し期間」を延長するのが有効です。7日間の延長でメタン発生を3割削減できることが確認されています。

    Green Carbon株式会社は水田中干しにより温室効果ガスの排出を削減し、その削減分についてJ-クレジットとしての認証を受けました。

    関連ページ:日本初・最大規模の水田クレジット認証を取得(Green Carbon株式会社

  • バイオマス発電
    食肉や乳製品を生み出す家畜の飼養では、毎日多くの排泄物が発生し、適切な管理下で微生物が分解する過程でメタンとN2Oが生じます。なお、N2Oは温室効果がCO2の265倍であり、少量でも影響の大きい温室効果ガスです。

    株式会社十文字チキンカンパニーは、年間約13万t発生する鶏糞をエネルギー源としてバイオマス発電に利用しています。排泄物管理による温室効果ガスを削減するだけでなく、再生エネルギーの創出にもなり、一石二鳥の取組です。

    関連ページ:バイオマス発電所の建設について(株式会社十文字チキンカンパニー)

  • メタン排出削減飼料
    家畜の消化管内発酵(げっぷ)によるメタン排出は、全世界の温室効果ガス総排出量の約5%を占めると推定されており、対策が求められています。

    ウシやヒツジ、ヤギなどの反芻動物は、胃の中にもつ約8千種もの微生物のはたらきによって繊維質を消化し、その過程で発生したメタンを口からげっぷとして排出しています。
    腸内のメタンガス生成菌に作用してメタン発生を抑制する効果が期待されるのが、カシューナッツの殻の抽出液です。

    株式会社エス・ディー・エスバイオテックは、南阿蘇村の和牛「くまもとあか牛」に対してメタン排出削減飼料を提供し、メタン削減の実証を支援しています。

    関連ページ:メタンガス排出削減に向け、地域と環境に配慮したブランド和牛の肥育に協力(idemitsu)

  • AIとITCを活用したスマート農業
    作物の生育を助ける肥料も温室効果ガスの発生源です。土壌微生物のはたらきにより、農地・林地に投入した窒素肥料が分解される過程や、堆肥となる有機物や土に埋めた植物残渣が分解される過程で、N2Oが発生します。

    BASFジャパン株式会社は、衛星画像とAI分析で作物の育成を予測するシステムを開発しました。AI分析により最適な時期に施肥や防除作業ができ、生育のムラを確認して施肥することで肥料の使用量の削減が可能です。

    肥料の使用を適正化することによって、温室効果ガスの発生を抑制することが期待されています。

    関連ページ:ほ場の“見える化”で化学肥料を削減!衛星画像×AI分析で農業分野の“脱”温暖化へ(BASFジャパン株式会社)

 

 

農業機械の脱炭素化・カーボンニュートラル事例

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農林業は重労働をともない自然環境の影響を直接受けるため、生産性を高めるためには機械や設備の利用が欠かせません。農業機械・船舶・ビニールハウスの暖房などの利用では、燃料の焼却に由来するCO2が発生します。

ヤンマーアグリ株式会社が2025年の商品化を目指しているのが、電動モーターによる小型電動農機です。電動農機は運転中のCO2排出がゼロで、静粛性にも優れているため夜間や近郊農業、ハウス内での作業への利用に適しています。

開発されたモデルは、除草・除雪・耕うんなどのさまざまな作業に対応でき、斜面や不整地での安定的な走行が可能です。運転席をなくし、遠隔操作による自動運転機能の搭載も視野に開発を進めています。

関連ページ:農業のゼロエミッション化を目指した小型電動農機コンセプトモデル「e-X1」を初公開(YANMAR)

また、井関農機株式会社は「欧州グリーンディール」により電動化の流れが急速に進む景観整備市場にむけて、リチウムイオンバッテリ搭載の電動モーアを開発しました。

電動化によりゼロエミッションを実現し、低騒音・低振動で快適に作業でき、家庭用コンセントでの充電が可能です。

関連ページ:2023年度上期新商品を発表(ISEKI)

さらに、株式会社クボタも電動トラクタを開発し、同馬力のディーゼルエンジンを搭載した従来製品と比べて、30〜50%のCO2排出削減を実現しています。

電動トラクタは小型で都市部の公園等での使用を前提にしていますが、充電設備から遠く離れた農地や林地で作業するための水素燃料電池トラクタも開発中です。

しかし、水素燃料のコストはまだまだ高く、水素燃料電池トラクタが普及するためには水素供給のインフラ整備も併せて必要になるでしょう。

関連ページ:クボタグループ ESGレポート 2024

このように農業機械のメーカー各社は、世界市場を視野に脱炭素化の技術開発を進めています。

 

 

Terrascopeを活用する農業分野の企業の脱炭素化事例

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インドネシアの乳製品大手Greenfieldsは、脱炭素化・サステナビリティの課題に積極的に取り組み、排出量削減の機会と目標についてステークホルダーを効果的に巻き込むために、説得力のある排出量データとインサイトを得ることを検討していました。

競合他社とのベンチマーク、ホットスポットの特定、脱炭素化と排出量削減のシミュレーション、コスト便益分析などの分析に必要なものがスコープ3排出量のベースラインであることを認識し、それらの分析機能と企業の支援事例が豊富なTerrascopeの採用を決定しました。

Terrascopeのシステムを活用することで、メタン排出を含むスコープ1、2、3の排出量に対応する包括的なベースラインを確立し、乳製品の生産における各段階の主要な排出要因の特定、従業員やステークホルダーへの説得力ある分析データの提供を可能としました。

また、調達、腸内発酵によるメタン排出、糞尿管理、輸送・流通までのプロセスにおける排出量削減方法をモデル化し、代替調達によって牛飼料の排出量を50%以上削減できる可能性といった、効果的な削減機会まで発見可能となっています。

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Terrascopeのデータ管理・取り込み・自動分類などの機能によって、人的リソース・時間コストの大幅な削減も可能となり、更に踏み込んだ計測の可能性が期待できるようになっています。

Terrascope活用の事例詳細ページ:Greenfields: 乳製品バリューチェーンにおける持続可能性に資するメタンと排出のインサイトを発見

 

 

農業分野の脱炭素化を支援するTerrascopeシステム

Terrascopeは、FLAG(森林、土地利用、農業)企業向けに設計されたSaaS型炭素測定・管理プラットフォームで、排出量の測定や削減の脱炭素化を強力にサポートします。

機械学習を活用し、高速かつ精度の高いデータ取り込みと分析を実現し、LUC(土地利用変化)や非LUCの排出、FLAGと非FLAG排出量の分離・可視化を可能にし、企業が科学的根拠に基づいた目標を設定し、削減施策を実行する脱炭素化のプロセスを支援します。

関連ページ:森林、土地、農業(FLAG)部門 – その概要および企業が排出量の測定と管理を始める方法

(JP) How Terrascope Supports Your FLAG Journey 2

Terrascope(テラスコープ)の脱炭素化プラットフォームは、排出量の測定、削減計画・目標設定と実行、情報開示・レポーティングなど、脱炭素化の各種プロセスをサポートする機能と、サステナビリティ専門家とカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供しています。

機能の無料デモや、まずはお気軽なご相談もお受けしていますので、下記フォームからお問合せください。

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