データの活用は、持続可能な未来を実現するための必須要素だと考えられます。しかし、データを正確に収集し、適切に活用することは容易ではありません。
この記事では、グローバル企業のデータの活用(長い旅路となる「データジャーニー」と呼ばせてください)の成功例を簡単にご紹介します。
本テーマは、2024年6月27日(木)に弊社が開催したウェビナー「将来を見据えた脱炭素化がもたらすビジネスの継続と拡大 ~国内外の動向と事例に学ぶ:GHG排出量の測定・分析・削減をビジネスへつなげる~」で、弊社Cheif Commercial Officer のフェリペ・ダギーラがお話しさせていただきましたオープニングセッション「世界的な脱炭素化の流れと企業が取り組むべき課題」のネット・ゼロ実現に向けた3つのジャーニーのうちの最初の一つ、データジャーニーに関するもので、その具体的事例を本ブログで紹介します。
目次
脱炭素化におけるデータジャーニーの重要性・課題
データジャーニーは、持続可能なビジネスの基盤と言えるような、基礎的なものであると同時に最も重要なジャーニーと言っても過言ではありません。企業が排出量を正確に測定し、そのデータをもとに行動することが、気候変動対策の第一歩となります。データの質が悪いと、企業は将来の排出量予測や目標設定において誤った判断をする可能性があります。これは企業経営全般に影響を及ぼし、評判にも影響を与える可能性のある重大な問題です。
排出量データの質を向上させるステップ
データジャーニーは段階的なプロセスです。まずはデータを活用し測定することが必要になるわけですが、その際には、算出しやすい支出ベースのデータから始めることを推奨します。次に活動ベース、地域ベース、サプライヤーベース、そして最終的には現場ベースのデータの活用へと移行することが望ましいです。このようにして、データの粒度を高めながら測定値の精度を上げることがとても重要です。各ステップを経て、企業は排出量の多い領域(ホットスポット)を特定し、その優先順位を上げ、そこに集中してリソースを投下するような脱炭素化戦略を立てることができます。
Terrascope活用企業の脱炭素化の取り組み事例
例えば、グローバルのFortune 500に名を連ねるシンガポールのOlam(オラム)社というアグリ&フード企業は、Terrascope(テラスコープ)で計測したことで、初期の排出量測定との間に約35%の誤差があることに気づきました。彼らはTerrascopeと協力しデータの質を向上させることで、新たな脱炭素化計画を立て直すことができました。以下はその1年目と2年目の排出量のマッピングと信頼性を表したチャートです。色が緑になるほど各調達原材料の測定排出量の信頼性が高いことを表しており、2年目には多くのアイテムで信頼性の高い値となっていることがわかります。データの精度向上は、終わりがない旅であり、企業が持続可能性の目標を達成するための重要かつ不可欠な要素なのです。
AIとデータの融合
AIの活用は、データジャーニーをさらに強力なものにします。AIは、排出量の多いホットスポットに対処するための最も効果的な行動を特定するのに大いに役立ちます。例えば、MCアグリアライアンス社は原材料の加工を日本からシンガポールに移管し、一度シンガポールを経由するサプライチェーンに変更したことで、原材料を直接日本に輸入する流れよりも25%の排出量削減に成功しました。これはAIのモデリングや効率的なシミュレーションの助けを借りて実現された成果です。
AIはまた、企業全体で持続可能性のインサイトを共有し、日常的な意思決定に活用することを可能にします。これにより、持続可能性の専門家だけでなく、全ての従業員がデータに基づいた賢い選択を行えるようになり、「脱炭素化ジャーニー」においても大きな助けとなるのです。
顧客事例
MCアグリアライアンス: GHG排出データを活用し、将来性のあるサプライチェーンを構築
結論
データジャーニーは、持続可能な未来を実現するための重要な一歩であり、その中でも重要な旅路です。企業がデータの質を向上させ、それを基にした合理的な経営判断をすることで、脱炭素化の取り組みは進展すると言えるでしょう。またそこにAIを活用することで、その行程をさらに科学的なものに押し上げ、効率はさらに高まると思われます。私たちは、データの力を最大限に活用し持続可能性の目標を達成するために、今後もこのような事例を発信していきます。ゼロエミッションに向けて、共に手を取り進んでいきましょう。何かご質問がありましたら、いつでもお問い合せくださ