近年日本国内でも数多くの企業がスコープ3を含めたCO2など排出量の計算、削減の取り組みの事例が見られるようになり、開示の義務化など今後さらに重要度が増していくことが予想されます。
本記事では日本国内の企業の代表的なCO2削減取り組みの事例や近年の削減技術、そしてグローバルに評価されているTerrascope(テラスコープ)の排出量計算・削減支援ツールを活用する有数企業の削減の取り組み事例や機能の特徴をご紹介します。
目次
近年、地球温暖化による気候変動は世界各地で異常気象や自然災害をもたらしています。
昨年は中国やブラジル、ベトナムなどで最高気温の記録を更新した他、アフリカでは低気圧による大雨で多数の死者が出る被害が発生しました。
実際に2023年の地球の平均気温が産業革命以降最高水準まで上昇したことが、COP28で公表されています。
COP28ではパリ協定で掲げられた目標設定に対して、世界各国が進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク(GST)」が初めて実施されました。
今後も5年ごとにGSTで進捗報告が必要となるため、日本政府はますます温室効果ガスの削減を国内企業へ訴えかけることが予想されます。
国内企業が取り組むべき最初の課題は、主な温室効果ガスであるCO2排出量を算出・把握することです。
その理由の一つに、各企業に対して排出量の報告が義務付けられることがあります。
2023年4月に改正された省エネ法では、一定のエネルギー使用量がある企業に対して排出量を定期報告することが義務付けられました。
その他の理由として、CO2排出量を効率よく削減できるようになることがあります。
CO2削減には初期投資が必要になるため、効率の良い対策をしないと費用対効果が下がるリスクがあります。
つまりCO2排出量を算出する中で、自社の事業や製品のどこが主な排出源か把握すれば効率よく対策ができるようになります。
関連ページ:CO2排出量の計算方法・ツール・Terrascope活用企業の事例
ここからは日本企業が取り組むCO2削減の最新の取り組みについて、具体的に3社の事例を紹介します。
タイヤ・ゴム事業をグローバルに展開するブリヂストンでは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて中長期計画を公表しています。
2030年を目標とした「マイルストーン2030」では、商品のライフサイクルやバリューチェーン全体で排出量を50%削減することを目標に掲げています。
主な製品であるタイヤのライフサイクル段階におけるCO2排出量は以下の通りです。
①原材料:10.3%
②生産工程:2.7%
③流通工程:0.4%
④使用工程:87.6%
⑤廃棄・リサイクル:-0.9%
ブリヂストンでは各工程に対してそれぞれ、CO2削減への対策を定めています。
工程 | 取り組み |
原材料調達 | タイヤ使用材料の変更やグリーン調達の促進 |
生産工程 | 再生可能エネルギーの導入や、工場の生産効率の向上 |
流通工程 | 輸送ルートや方法の見直し、輸送効率の向上など |
使用工程 | タイヤの転がり抵抗の低減や、エコドライブの促進など |
廃棄・リサイクル | 再利用タイヤの普及、タイヤの軽量化による廃棄物削減など |
例えば再生可能エネルギーの導入拡大では、国内4工場や中国、インド工場で使用する電力すべてを再生可能エネルギーに切り替えています。
さらにタイのチョンブリ工場では1MWの太陽光発電パネルを設置して電力を供給しています。
太陽光パネルの導入はその他の国内外工場で拡大しており、全社では合計5.8MWの電力を供給しています。
(参考ページ:環境長期目標(2050年以降):カーボンニュートラル化 - ブリヂストン公式 )
首都圏を中心に輸送事業やレンタカー事業を営むスタンダード運輸では、運送業界の法令改訂などで求められる脱炭素経営に向けた準備を進めています。
2018年から脱炭素経営を重要な経営方針に設定し、エコドライブや再生可能電力への切り替えを進めてきました。
その背景には運送業が軽油由来のCO2排出量が多いことで、取引先から今後一層カーボンニュートラルに向けた取り組みを求められることがあります。
スタンダード運輸ではCO2排出量の算出に算定システムを使用して、事業所の使用エネルギーや運送中の軽油・ガソリンによるCO2排出量の算定を実施しています。
算定には毎月の請求書や領収書が用いられ、2018年からのCO2排出量を実測値ベースでデータ化を達成しました。
現在では日々の燃料使用量からCO2排出量を算定し、WEB上で公開するシステムを導入しています。
CO2排出量の削減への取り組みは再生可能エネルギーへの切り替えや、社員のエコドライブの徹底などで活動を進めています。
エコドライブで燃費を向上させた社員に対して、給与アップや表彰制度を作り真の意識向上につなげています。
将来的にはトラックのEV化とAI自動配車システムを導入して排出量30%削減を目標に掲げています。
(参考ページ:中小規模事業者向けの脱炭素経営導入 - 環境省 )
国内軽自動車でシェアNo.1を持ちグローバルにも展開するスズキは、自動車業界が今後求められるカーボンニュートラルに積極的に貢献することを目標としています。
主な事業地域である日本と欧州では2050年にカーボンニュートラルを達成し、インドでは2070年を目標時期として掲げています。
スズキのカーボンニュートラル実現への道筋は「スズキ環境ビジョン2050」にまとめられています。
基本的な考え方としてパリ協定で採択された「世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えること」を目標として、CO2排出量の削減に取り組むと記されています。
具体的な手段として製品が排出するCO2を2010年比90%減することや、事業活動全体で発生するCO2を80%減させることなどが公表されています。
さらには大気汚染や水環境への負荷、資源枯渇など幅広い環境問題に対するビジョンがまとめられています。
CO2排出量の算定は、バリューチェーン全体の排出量を把握するためスコープ1,2,3で取り組まれています。
2021年度の算定結果ではスコープ3がもっとも排出量が多く、その中で製品使用時に全体の82.7%を占めていることが分かりました。
このことから製品使用時のCO2排出量削減が最大の課題であるとして、電気自動車に向けた投資をインド工場で進める活動を推進しています。
その他には自動車の生産工場におけるCO2排出量削減にも取り組んでいます。
具体的には工場内の使用電力を太陽光発電やCO2フリー電力に切り替える取り組みや、徹底した省エネや再エネ化といった取り組みを進めています。
CO2排出量の推移を原単位で見ると、2021年度は0.352(t-CO2/台)となっていて2017年度の0.332(t-Co2/台)を上回っています。
その原因は生産台数の減少による効率悪化であり、スズキが推進してきたCO2排出削減活動を打ち消す結果となっています。
とはいえスズキは活動を今後さらに推進して、生産数が回復してきたときに大きな効果となることを目標にしています。
(参考ページ:サステナビリティレポート 2022 - スズキ株式会社)
近年カーボンニュートラルに関して様々な削減技術の検証が進められています。
日本政府も「グリーン成長戦略」と位置づけ、支援金制度を導入してカーボンニュートラルに向けた技術開発・社会実証に対して後押しを開始しています。
今後活発な研究開発・実証試験が行われる技術について解説します。
生成したエネルギーを効率よく・無駄なく利用するためのシステムのことです。
使用エネルギー量を見える化して、非効率な使用方法や老朽化が無いかなど調べます。
省エネによるコスト削減や補助金制度活用で経営面でメリットが発生する場合があります。
火力発電所や製鉄所などの化石燃料を大量に燃焼させる施設では、早急なCO2排出削減が求められています。
その解決策として検証されているのが水素やアンモニアを代替燃料とする技術です。
水素の持つ爆発性や、アンモニアの毒性といった懸念点への対応が必要となります。
また水素やアンモニアは海外で製造する方がコストは安くなるといわれており、海上運搬技術も重要なテーマとなっています。
CCSとCCUはどちらも火力発電所などで発生する排ガス内のCO2を、特殊な技術で分離・回収する方法です。
違いはCCSが回収したCO2を地中深くに貯留・圧入するのに対して、CCUはCO2を原料として新たな素材やエネルギーの材料とする点です。
メタネーションはCCUの技術の一つとして位置付けられ、分離回収したCO2にH2を反応させてCH4(メタン)を合成する技術です。
合成メタンは大気中のCO2を増加させないカーボンニュートラル燃料として再利用されます。
合成メタンは都市ガスへの置き換えが容易で、水素やアンモニアを燃料とするのに比べて既存のインフラをそのまま利用できるメリットがあります。
日本だけではなく、シンガポールとアジア太平洋など海外にも展開する大手飲料食品会社であるポッカは、事業活動全体におけるスコープ3に対応した計算システムを導入することで、特にパッケージングからのサプライチェーンへの影響を把握し、脱炭素化・サステナビリティへの取り組みを図ろうとしていました。
しかし、CO2などの排出量の85% 以上を占めるスコープ3は主にサプライチェーン内の間接的な排出によるもので、複雑なオペレーションやデータ不足から概算が困難でした。
そこでTerrascopeを採用することで、独自の機械学習機能を利用し、これまで行っていた手動プロセスより約5倍も速くCO2排出量を測定し、92%の高精度で複雑なスコープ3排出量をも計算できるようになりました。
自社が全ての製造を管理していない製品の排出量も把握できるようになり、CO2排出量の削減可能性・施策まで得られるようになっています。
(事例詳細:ポッカ: スコープ3のデータ不足も補完できる製品カーボンフットプリント(CFP)測定)
様々な商品を扱う総合食品商社である三菱食品は、ビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、2050年までのカーボンニュートラルやネットゼロの実現に向けてCO2排出量の削減、スコープ3の把握に取り組んでいます。
Terrascopeを導入することで、24万をも超えるSKUを類似した製品カテゴリの約2,000種類に分類し、各製品カテゴリの代表的な包材や成分構成に基づいて、製品カテゴリ別カーボンフットプリントを算出し、スコープ3の排出量を把握し、削減目標の設定と実施へと進めています。
(事例詳細:三菱食品:気候開示に向けたサプライチェーン排出量の可視化 )
英国に本社を置く大手食品会社のPrinces Groupは、持続可能性を重視する取引先企業やEUで厳格化されている規制に備え、製品のカーボンフットプリント・排出量測定に取組んでいます。
排出量の99%を占める上位30種類の事業活動を特定し、Terrascopeツールの高速なデータ取込み機能により、タイムリー且つデータ主導の意思決定が可能となっています。
計測した製品の内、2つの食肉原料が総排出量の23%を占め、それらの排出係数が他の原材料と比較して実に17倍もの数値であることを把握でき、これらの原料に関連する排出量を削減するために調達戦略を模索し、サプライヤーと連携して排出量削減に取り組んでいます。
(事例詳細:Princes Group: データ収集から脱炭素化の取り組みをわずか8週間で実行 )
世界20カ国に76のホテルとリゾート施設を展開するシンガポールのバンヤン・グループは、持続可能な開発や事業活動のため、CO2など排出量の測定と削減に取り組んでいます。
主要な地域、ビジネスユニット、活動による排出量が多いホットスポットをスコープ3まで含めて高精度に特定し、全排出量の70%を占める電力・食材・燃料などの活動項目を把握し、今後の事業活動や削減施策に活かしています。
(事例詳細:バンヤン・グループ: ホテル、ホスピタリティ、飲食業界 における脱炭素化をリード )
Terrascope(テラスコープ)のシステムを活用する日本国内・海外の様々な有数企業の導入事例、脱炭素化・CO2など排出量の計算・削減の成功事例について、脱炭素化の支援・取り組み事例のページもあわせてご確認ください。
Terrascopeの脱炭素化プラットフォーム・システムでは、下記などのCO2など排出量計算・削減をサポートする機能と、サステナビリティ専門家やカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供しています。
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