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脱炭素に向けた大手・海外企業の取り組み事例とTerrascopeの支援事例

作成者: Terrascopeチーム|2025/45/15

 

 

目次

  1. そもそも脱炭素とは?背景や課題

  2. 日本と世界の脱炭素化の取り組み・目標

  3. 企業の脱炭素の取り組み手法

  4. 国内外の大手企業による脱炭素の事例

  5. Terrascopeを利用する大手・海外企業の脱炭素化の成功事例

 

 

 

そもそも脱炭素とは?背景や課題

「脱炭素」の炭素(カーボン)はCO2のことで、脱炭素とはCO2をはじめとする温室効果ガスの排出量をゼロにするという意味です。似た意味をもつ言葉に「カーボンニュートラル」がありますが、区別なく使われることも少なくありません。

厳密には、カーボンニュートラルは排出量を実質ゼロ、つまり、温室効果ガスを完全には無くせない分を森林などの吸収量で埋め合わせ、差し引きゼロにすることを意味しています。

脱炭素が求められる背景にあるのは、世界共通の課題である地球温暖化です。地球温暖化による洪水・干ばつ・海面上昇・生物多様性の低下などにより、健康被害や農林水産業への悪影響、インフラ機能停止などのリスクが懸念されています。

地球温暖化の原因は、人間の活動に起因する温室効果ガスの増加です。地球温暖化を防ぎ、安心・安全で持続可能な社会を構築するために、温室効果ガスを極力減らした脱炭素社会へと転換することが急務となっています。

関連記事脱炭素化とは?企業の課題・取り組み・Terrascopeの成功事例

 

 

日本と世界の脱炭素化の取り組み・目標


地球温暖化の影響を最小限にするには、世界全体の平均気温の上昇を、工業化以前と比べ て1.5℃のレベルに抑えなければなりません。この1.5℃という上限が、国際的な共通目標として合意されたのがパリ協定です。

パリ協定は、国連気候変動枠組条約のもとで開催された第21回締約国会議(COP21)で採択されました。各国はパリ協定に基づき、温室効果ガスの排出削減目標であるNDC(Nationally Determined Contribution)を決定しています。

目標年を定めてカーボンニュートラルの実現を表明している国は、2021年時点で154カ国・1地域です。日本は、2050年カーボンニュートラルの実現と、2030年度において2013年度比で46%の削減をNDCとして提出しています。

関連ページ:第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組(経済産業省 資源エネルギー庁)

2023年2月には、脱炭素、エネルギーの安定供給、経済成長を同時に実現することを目的とした「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。

GXとは、地球温暖化対策を念頭に、クリーンエネルギー中心で環境に負荷の少ない経済・社会へと大転換し、経済成長の機会にしようとする政策です。この基本方針は、GX実現のためのロードマップで、150兆円を超える官民投資を見込んでいます。

政策の柱となるのは次の2点です。

  • 省エネの推進とエネルギー自給率の向上につながる脱炭素エネルギーへの転換
  • GXの実現に向けた先行投資支援などを含む成長志向型カーボンプライシング構想の実現・実行

これらを具体化するために各種法律が整備され、GX投資の支援や化石燃料賦課金などの徴収、排出量取引などがすでに始まっています。

いま世の中は、脱炭素社会の実現にむけて変わろうとする真っ只中にあるのです。

関連ページ:「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました(経済産業省)

 

 

企業の脱炭素の取り組み手法

今後企業は、脱炭素にむけた政策による課税や規制への対応を避けられないと予想されるため、排出削減の具体的な方策を練ることが不可欠です。

自社の温室効果ガス排出量を把握することから始め、削減目標を定めたうえで脱炭素にむけて可能なところから取り組みを実行していくことになります。まず省エネ・再エネが最優先であり、どうしても削減不可能な場合にクレジット制度などを利用するのが基本です。

以下に、具体的な手法について解説します。

省エネ

省エネの方法には、主に建築物・産業プロセス・AIによるマネジメントの3つの視点があります。

建築物では、高断熱・高気密化や高効率設備の導入、再エネの活用、パッシブデザインの採用などにより、エネルギー消費量ゼロの施設(ZEB)の実現が可能です。
関連ページ:ZEBの定義(環境省)

産業プロセスでは、高効率の設備やヒートポンプの導入、廃熱の回収、再エネの利用、輸送の最適化、熱や電気の損失防止などがあげられます。

効率的で無駄のないエネルギー利用を可能にするのが、AI(人工知能)や IoT(Internet of Things)を活用したEMS(エネルギーマネジメントシステム)です。

EMSは、リアルタイムでエネルギー使用量をモニタリングし、需要の予測によりエネルギー供給を最適に制御するとともに異常検知も行います。

省エネは照明や冷暖房の無駄遣いを防ぐ個人の努力も大切ですが、プロセスの再検討や設備導入によって大幅に実行できる可能性があります。

再エネの導入

最も簡単に再エネ電力を調達する方法は、電力契約を電気事業者が提供する「再エネ電力メニュー」に切り替えることです。

また、敷地内外で太陽光発電を導入するのも一案で、導入方法としては購入のほかレンタル方式やPPA方式があります。余剰電力を売電できる場合があり、災害時にも電気が使用できる点は大きなメリットです。

関連ページ:はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)(環境省)

燃料と原料の脱炭素化

燃料や原料を化石資源からバイオマス由来のものに転換することで、脱炭素が可能です。

もっとも一般的な方法として、電気自動車や燃料電池車の導入があげられます。また、植物油などの廃油から作られるバイオディーゼルは、ディーゼルエンジンにそのまま利用可能です。

その他、廃プラスチックや廃ゴムの原料への転換やCO2からの化学原料や化学性機能品製造、人工光合成による化学原料製造、水素の利用など、研究開発が進められています。

炭素の見える化

インターナルカーボンプライシングやカーボンフットプリントにより温室効果ガス排出量を数値として見える化することで、効率的な削減が進みます。

インターナルカーボンプライシングとは、企業が内部で独自に炭素価格を設定し、事業が環境に及ぼす影響を定量的に把握する方法です。

また、カーボンフットプリントとは、製品やサービスの原材料調達から使用、廃棄、リサイクルまでの全過程で排出される温室効果ガスをCO2に換算した数値を指します。

炭素の見える化は、運営・投資・事業の選定に役立つほか、消費者やステークホルダーに対し、自社の脱炭素への積極性をアピールするのにも有効です。

関連記事:カーボンフットプリントとは?計算方法・必要性・企業事例を解説

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、避けることができない温室効果ガス排出について、排出量に見合った削減活動に投資することにより、排出量を埋め合わせるという考え方です。

企業は、他社の削減量をクレジットとして購入することにより、カーボンオフセットすることができます。

2023年10月には東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開設し、要件を満たす法人や任意団体は、登録申し込みすることで随時クレジット取引が可能となりました。

また、個人がカーボン・クレジットを取引できるプラットフォームも民間企業によって整備されています。

関連ページ:カーボン・クレジット市場(JPX)

 

 

国内外の大手企業による脱炭素の事例

先進的な脱炭素経営を実現している企業は、排出量を把握したうえで野心的な削減目標を掲げ公開しています。

さらに、SBTやRE100など国際的な脱炭素イニチアチブに参加しているケースも少なくありません。近年では、中小企業でもSBT認証取得が顕著に増加し脱炭素の動きが加速しています。

ここで紹介するのは、前述の脱炭素手法を組み合わせて目標達成を目指している大企業の取り組み事例です。

株式会社リコー

リコーは、2030年・2040年・2050年の削減目標を設定し、自社における省エネと再エネ電力利活用と、サプライチェーンにおける温室効果ガスの可視化と削減に取り組んでいます。

  • 再エネ電力の購入、自家発電、PPA導入による再エネの積極的な利活用
  • 生産・業務プロセスの改革、高効率・省エネ設備導入、社屋のZEB化による徹底的な省エネ
  • 産業プロセス・事業所設備の電化、社有車のEV化と燃料転換の推進
  • ゼロエミッション材料調達、非化石燃料による輸送・サービス利用、顧客の再エネ導入によるサプライチェーンでの排出量削減

関連ページ:脱炭素社会の実現 | リコーグループ 企業・IR

戸田建設株式会社

戸田建設は、建設現場を含む全事業所のみならず、発注者に引き渡す建物の使用中や調達資材の製造等についても、温室効果ガス削減に取り組んでいます。

  • 設計・施工段階の効率化やバイオディーゼル燃料などカーボンニュートラル燃料への転換により、建設機械使用にともなう排出量を削減
  • 仮設照明におけるLED採用、再エネ電力の自家発電・PPA導入、RE100イニシアチブへの参加による再エネ電力利用の推進
  • 原材料調達から製造段階までカーボンフットプリントの小さい資材を特定し調達
  • 設計案件がZEBを達成するよう省エネ設計の強化

関連ページ:カーボンニュートラル実現に向けた行動計画 | 環境 | 戸田建設

Netflix(ネットフリックス)

2022年末までにCO2排出量の実質ゼロを実現し、その後も継続するという目標を掲げています。

  • 米国のオフィスや施設においてエネルギー効率監査を実施し、エネルギーおよびコスト削減の機会を特定し電力消費量を削減
  • すべてのオフィスや施設で100%クリーンなエネルギーを利用し電力供給を脱炭素化
  • グリーン水素燃料電池やモバイルバッテリー導入により制作現場においてゼロカーボン電力の新技術を試験的に導入
  • 自然生態系を保全・回復・保護するために、危機に瀕する自然環境に関する質の高い炭素クレジットを吟味して購入

関連ページ:Netflixの気候変動に対する取り組みの進捗状況について

 

 

Terrascopeを利用する大手・海外企業の脱炭素化の成功事例

最後に、脱炭素化の支援ツールである「Terrascope(テラスコープ)」を活用している、日本と海外の大手企業の一部の脱炭素化の事例をご紹介します。

AIを活用したスコープ3排出量測定の脱炭素化事例|三菱食品


総合食品商社である三菱食品は、気候変動に伴う将来的なリスクである炭素価格の導入が、食のサプライチェーンへ大きな影響をもたらすと分析し、持続可能なサプライチェーンの構築を目指し、早期にスコープ3の計測・可視化に取り組んできました。

当初の課題としては、数千のサプライヤー、製造業者、小売業者に散在する膨大な業務データの収集でした。受発注管理単位のSKUは24万件超で、それぞれに異なる製造方法、保管方法、輸送方法などのメタデータがあり、手作業で処理し、公開開示に必要なトレーサビリティを確保することに困難を抱えていました。

その後Terrascopeのシステムを採用し、AIを活用して24万件超のSKUを類似した約2,000の製品カテゴリに自動分類することで、スコープ3を含む排出量ベースラインの算出、重要なホットスポットの特定が実現されました。

 

Terrascopeのデータ管理・取り込み・自動分類などの機能によって、人的リソース・時間コストの大幅な削減も可能となり、更に踏み込んだ計測の可能性が期待できるようになっています。

事例詳細ページ:三菱食品・AIを活用したスコープ3排出量測定の脱炭素化事例

 

5倍速・高精度のCFP測定を達成し、脱炭素化を加速|ポッカ


ポッカはTerrascopeのシステムを活用することで、4,980SKUの製品におけるカーボンフットプリント(CFP)の高速度での測定を実現し、脱炭素戦略を推進しています。

当初、スコープ3排出量に関するデータが不足し、サプライチェーン全体の排出量把握が困難でしたが、Terrascopeを活用することで不足データをAIで補完し、詳細な排出量分析が可能となりました。

システム・AIを利用して排出量を測定することにより、特に包装や原材料の排出影響を可視化し、排出量削減の可能性を定量化することに成功しました。

データ収集とレポート作成に費やされていたチームの時間・リソースを他の重要なタスクに使うことができ、より改善が必要な部分に集中し、サステナブルな未来に向けてより効果的で戦略的な決断を下すことができるようになりました。

 

 

事例詳細ページ:ポッカのCFP測定・脱炭素化の支援事例

 

高速かつ詳細な排出係数の計測と削減の取組み|Princes Group


英国に本社を置く大手食品会社のPrinces Groupは、持続可能性を重視する取引先企業やEUで厳格化されている規制に備え、製品のカーボンフットプリント・排出量測定に取り組んでいます。

排出量の99%を占める上位30種類の事業活動を特定し、Terrascopeツールの高速なデータ取込み機能により、タイムリー且つデータ主導の意思決定を可能としました。

計測した製品の内、2つの食肉原料が総排出量の23%を占め、それらの排出係数が他の原材料と比較して実に17倍もの数値であることを把握でき、これらの原料に関連する排出量を削減するために調達戦略を模索し、サプライヤーと連携して排出量削減に取り組んでいます。

事例詳細ページ:Princes Group - データ収集から脱炭素化の取り組みをわずか8週間で実行