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脱炭素化

ネットゼロとは?目標の定義や取り組みを解説

気候変動の深刻化により、「ネットゼロ」「カーボンニュートラル」「脱炭素」といった言葉を目にする機会が増えています。これらはいずれも温室効果ガスの削減に関わる重要なキーワードです。 中でも「ネットゼロ」は、まだ耳慣れない方も多いかもしれません。本記事では、ネットゼロの定義や背景、達成に向けた取り組み、注目される建物の省エネ化(ZEB)についても解説します。

 


目次

  1. ネットゼロの意味

  2. ネットゼロが重要視される背景

  3. カーボンニュートラルとの違い

  4. SBTiによるネットゼロ基準

  5. ネットゼロへの取り組み事例

  6. Terrascopeのネットゼロの取組み支援事例


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ネットゼロの意味

ネットゼロ(net zero)の net は「正味の」「差し引きの」という意味であり、ネットゼロは「差し引きゼロ」ということです。

温室効果ガスに関して用いる場合、ネットゼロとは排出量から吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

温室効果ガスとは、CO₂・メタン・一酸化二窒素・ハイドロフルオロカーボン・パーフルオロカーボン・六フッ化硫黄・三フッ化窒素の7種で、それぞれについてネットゼロを達成する取り組みが必要です。

全ての温室効果ガスは、地球温暖化係数を掛けてCO₂排出量に換算し合算されます。この合計の排出量から吸収量を差し引いて実質的にゼロにすることをネットゼロと呼びます。



ネットゼロが重要視される背景

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ネットゼロが求められる背景には、主に3つの理由があります。

  1. 気候変動リスクの深刻化
    地球温暖化の進行により、世界各地で洪水、干ばつ、大規模な山火事、海面上昇といった異常気象が頻発し、人の健康や生態系、経済社会への影響が深刻化しています。
    特に、気温上昇が1.5℃を超えるとリスクが飛躍的に増大するとされており、それを回避するには遅くとも2050年までにネットゼロを達成する必要があります。

  2. 経済成長のチャンスとしての脱炭素
    日本を含む多くの国で、カーボンニュートラル宣言(2020年、菅首相による所信表明)を契機に「経済と環境の好循環」を掲げた政策が加速しています。脱炭素に向けた技術開発やビジネスモデルの転換は、新たな産業や雇用の創出にもつながると期待されています。
    ネットゼロは、気候対策であると同時に経済成長の戦略的な柱でもあります。

  3. 企業のサステナビリティと競争力維持

    日本政府は、2028年度から化石燃料輸入業者などを対象にGX(グリーントランスフォーメーション)付加金を導入する予定であり、企業の排出量に対するコスト負担が増す可能性があります。​このように、カーボンプライシングや炭素税をはじめとする法規制の整備が進む中、将来的に排出量の多い企業はコスト負担の増加というリスクを抱える可能性が高まっています。​

    また、世界の金融機関や投資家は、脱炭素に積極的に取り組む企業を優先的に支援する傾向を強めています。​そのため、ネットゼロは企業にとって、信頼の獲得や資金調達、競争力の維持に直結する重要な要素となりつつあります。​

このように、気候変動リスクを最小限に抑え、サステナブルな社会と企業経営を実現するうえで、ネットゼロへの取り組みが求められているのです。


カーボンニュートラルとの違い

2015年のパリ協定では、今世紀後半までにカーボンニュートラルを達成することが世界共通の目標として合意されました。

「ネットゼロ」と「カーボンニュートラル」は、同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なる点があります。

カーボンニュートラルは主にCO₂の排出に着目し、カーボンオフセットの活用によって比較的容易に達成されるケースもあります。
一方、ネットゼロはスコープ1・2・3すべての温室効果ガスを対象とし、まず直接排出の削減を優先する点で、より包括的かつ厳格な目標といえます。

Terrascope(テラスコープ)は、こうしたネットゼロの達成に向けて、企業の排出量可視化から削減計画の立案・進捗管理までを支援するソフトウェアを提供しています。

関連記事:カーボンニュートラルへの企業の取り組み・Terrascopeの支援事例を紹介

 

SBTiによるネットゼロ基準

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SBTi(Science Based Targets initiative)は、科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標の策定と認証を行う国際的なイニシアチブです。2021年10月に発表された「SBTi Corporate Net-Zero Standard」は、単なるカーボンニュートラルではなく、より厳格で包括的な「ネットゼロ」の達成を企業に求めています。​

この基準は、企業が気候変動対策として実効性のある目標を設定し、グリーンウォッシュ(見せかけだけの環境対策)を防ぐための明確なガイドラインを提供しています。​

以下は、SBTiのネットゼロ基準における主な要件です。

  • スコープ1・2(直接排出・購入電力由来の排出)
    1.5℃水準(地球の気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑えるための排出削減レベル)に沿った削減が必須です。

  • スコープ3(サプライチェーンを含む間接排出)
    サプライチェーンを含む間接排出については、最低でも2℃水準(気温上昇を2℃未満に抑えるレベル)の削減が必要です。

  • 長期目標(2050年まで)
    スコープ全体で90%以上の排出削減を行う必要があります。

  • 短期目標(5~10年)
    年4.2%の直線的な削減が求められます。

  • クレジットの使用
    削減目標の達成には、排出権取引などのカーボンクレジットは使用できず、実際の排出削減が前提です。

なお、SBTiは現在、スコープ3排出に対する環境属性証書(EACs)の使用について検討中であり、2025年に新たなガイドラインを発表する予定です。​これにより、将来的にクレジットの使用に関する方針が変更される可能性があります。​

Terrascopeは、SBTiの基準に基づく目標設定や申請プロセスを支援するサービスを提供しています。​企業のネットゼロ達成に向けた取り組みを、専門的な知見とツールでサポートしています。

参考:SBTi Releases Initial Draft of New Corporate Net Zero Standard
関連記事:SBTとは?認定取得メリットや日本企業の対応状況を解説

ネットゼロへの取り組み事例

温室効果ガスのネットゼロを実現する動きは、国・企業の両レベルで急速に進んでいます。2021年4月時点で、世界125カ国・1地域が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明。日本でも、カーボンニュートラル宣言を機に、グリーン成長戦略、地域脱炭素ロードマップ、GX実現に向けた基本方針など政策面の後押しが強化されています。

日本企業の取り組み状況

企業によるGHG排出削減の動きも活発化しています。2025年3月時点で、SBT(Science Based Targets)の1.5℃基準で認定を受けた日本企業は1,379社にのぼり、SBTiのネットゼロ基準での認定企業も67社に達しています。

パナソニックホールディングス株式会社

パナソニックは「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、2030年までに自社のCO₂排出を実質ゼロに、2050年までに全バリューチェーンでのネットゼロを目指しています。再生可能エネルギーの導入拡大と省エネ技術の進化を両立させた取り組みです。

参考:パナソニックグループがSBTiから「ネットゼロ目標」の認定を取得

イオン株式会社

2050年までに店舗からのCO₂排出をゼロにする「脱炭素ビジョン2050」を掲げ、2030年には2010年比で35%の削減を目指しています。省エネ推進や再エネ導入に加え、次世代型「スマートイオン」店舗の開発も進めています。

参考:「イオン 脱炭素ビジョン2050」を策定

三井住友トラストグループ

金融機関としていち早くネットゼロを宣言。2050年までに投融資ポートフォリオと自社の温室効果ガス排出量のゼロを目指し、国際的な脱炭素枠組みに参加。2030年の中間目標や移行計画を定め、実行を進めています。

参考:当グループの気候変動に対する取り組み方針|三井住友トラストグループ


味の素株式会社

2050年までにバリューチェーン全体のネットゼロ達成を目指し、2030年にはスコープ1・2の排出量を50%削減。再エネ導入やLCAベースでの排出削減に加え、各拠点ごとに脱炭素の移行計画を策定し、取り組みを具体化・可視化しています。

参考:味の素グループのNet Zeroを含む温室効果ガス排出削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得

このように、ネットゼロの達成に向けた企業のアプローチは、業種や規模を問わず多様化しています。気候変動リスクへの対応にとどまらず、企業価値や投資評価にも直結する経営課題として、ネットゼロは重要なテーマとなっています。

建築分野でのネットゼロ実現:ZEB(Net Zero Energy Building)

ZEB(ゼブ)とは、建物が使うエネルギーを最小限に抑え、太陽光発電などで自らエネルギーを生み出すことで、年間のエネルギー収支を実質ゼロに近づける建築物です。断熱性の高い設計や省エネ設備、エネルギー管理システム(BEMS)を活用して実現されます。

ZEBは北海道から沖縄まで全国で建設されており、建築物の用途は事務所や工場、スーパー、銀行、福祉施設、教育施設など多岐に渡っています。ここでは、いくつかの事例をご紹介します。

ITOMACHI HOTEL 0(愛媛県):日本初のゼロエネルギーホテルとして開業し、宿泊施設のZEB化を実現。
参考:日本初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」2023年5月27日(土)オープン。建築設計は隈研吾氏。

西部保育園(奈良県三郷町):公立保育園として全国初のZEB認証を取得。
参考:三郷町立 西部保育園 | 株式会社福本設計

原信白根店(新潟県):AI制御空調や太陽光発電で一次エネルギー消費を112%削減し、スーパー業界初のZEB認証を取得。
参考:原信白根店『ZEB』認証取得のお知らせ

ZEBは、脱炭素だけでなく電力コスト削減、災害時のエネルギー自立といった面でも注目されています。

Terrascopeのネットゼロの取組み支援事例

Terrascopeは、CO₂などのGHG排出量の計測と削減を支援するSaaSプラットフォームのシステムを提供することを通じ、これまでに国内外の様々な企業のネットゼロへ向けた取組みを支援してきました。ここではTerrascopeを活用した企業の取り組み事例の一部をご紹介します。


約25%のサプライチェーン排出量の削減事例|MCアグリアライアンス

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三菱商事とOlamの合弁会社であるMCアグリアライアンスは、Terrascopeのシステムとコンサルティングを活用し、サプライチェーン全体の排出量削減に取り組みました。スコープ3排出量の可視化とシミュレーションにより、加工拠点や輸送ルートを最適化。最大25%の削減ポテンシャルを特定し、コスト削減やリスク低減にもつなげています。

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Terrascopeの事例詳細ページ:サプライチェーン排出量の削減・脱炭素化のコンサル支援事例

AIを活用した排出要因の分析・削減事例|Greenfields

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インドネシアの乳製品大手Greenfieldsは、Terrascopeを導入し、スコープ1〜3の排出量を網羅的に分析。特にメタン排出に着目し、牛飼料の調達や糞尿管理、輸送工程などでの削減機会をモデル化しました。AIによる自動分類・分析により、排出量とコストの同時削減を実現しています。

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Terrascopeの事例詳細ページ:Greenfields - 乳製品バリューチェーンにおける排出量計測と削減事例

 

Terrascopeは、二酸化炭素などの排出量の計測や削減施策などのプロセスをサポートする機能と、サステナビリティ専門家やカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供し、ネットゼロを支援しています。

  • AIを活用したデータ管理
  • CO2排出量などの測定計算と分析
  • 削減計画・目標設定シミュレーション
  • 削減施策のモニタリング・レポートの簡素化

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