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SBTとは?認定取得メリットや日本企業の対応状況を解説

作成者: Terrascopeチーム|2025/09/18

 

 

目次

  1. SBT(Science Based Targets)とは

  2. SBT認定の条件

  3. SBT認定の取得手順

  4. SBT認定による企業のメリット

  5. 世界と日本企業のSBT認定状況

  6. TerrascopeのSBT認定支援と企業事例

 

 

 

SBT(Science Based Targets)とは

SBT(Science Based Targets)は、企業などが設定する温室効果ガス排出量の削減目標であり、気候変動に関する国際的な合意であるパリ協定の目標と整合するものです。Science Based Targetsを訳すと「科学的根拠に基づく目標」となります。

2015年の国連気候変動枠組み条約COP21で採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度を十分下回り、1.5度に抑えることを目標に合意されました。

最新の気候科学によれば、気候変動のリスクを最小限に抑えるには平均気温の上昇を1.5度に抑えることが重要とされています。すなわち、世界全体で温室効果ガス排出量を2030年に半減、2050年に実質ゼロにすることが必要となります。

温室効果ガスの主要な排出者である企業が、1.5度目標を達成するために科学的根拠に基づく目標を設定できるよう支援・認定しているのが、SBTイニシアチブです。同イニシアチブは、CDP、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)によって共同運営されています。

企業はSBTを通じて、温室効果ガスの排出量をいつまでにどのくらい削減するのかを明らかにし、実効性のある削減計画を対外的に示すことが可能となります。

 

SBT認定の条件


SBTイニシアチブは、目標設定に関するガイドラインを示しています。

削減の対象となるのは自社の温室効果ガス排出量で、  事業活動に関係するサプライチェーン排出量(スコープ3)も含まれます。なお、中小企業向けのSBTではスコープ3は必須条件ではないものの、削減の取組みが推奨されています。
基準年は、データが存在する最新年とすることを推奨されており、 達成の目標年は短期目標として申請時点から5〜10年以内とすることが必要です。

世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度に抑える2度水準と1.5度に抑える1.5度水準では、排出量の削減割合が異なります。

基準

年間削減率の目安

補足事項

2度水準

1.23~2.5%

2023年以降認定対象外

2度より十分に低い水準
(WB2℃)

2.5~4.2%

2023年以降認定対象外

1.5度水準

4.2%/年以上

  
以前は、2度水準やそれ以下の基準でも認定が可能でしたが、現在新規に認定を受けるためには、スコープ1およびスコープ2に対しては、1.5度水準への完全な対応が必須となっています。

一方、スコープ3については必須ではありませんが、排出量全体の67%以上がスコープ3に該当する場合、削減目標の設定が求められます。

さらに、SBTイニシアチブはネットゼロ基準を設定しており、2050年までに排出量を実質ゼロとする長期目標の策定を促しています。

関連ページ:日本企業のSBTネットゼロの取り組み事例 (Terrascope)


SBTi FLAGの目標設定

また、森林、土地利用、農業に関連する温室効果ガス排出と除去を対象とした目標設定の枠組み「SBTi FLAG」も存在します。SBTイニシアチブが指定するセクター(森林・紙製品、食品・飲料加工、タバコなど)に属する企業や、FLAG関連の排出が企業全体の20%以上を占める企業は、別途FLAG目標の設定が求められます。

企業は森林伐採や土地転換、農業活動に伴う排出に加え、森林再生や土壌炭素隔離などによる除去量も算定する必要があります。

 

SBT認定の取得手順

SBT認定の取得手順は次の通りです。

  1. Commitment Letterを事務局に提出(任意)
  2. 目標を設定し申請書を事務局に提出
  3. SBT事務局による目標の妥当性の確認
  4. 認定された場合は、SBTのウェブサイトにて公表
  5. 進捗状況を年一回報告し開示

Commitment Letterは2年以内にSBT設定を行うと宣言するものですが、対応は必須ではなく、提出をしなくてもSBTの申請自体は可能です。SBT認定取得のほかコミットすることも含めて「SBTに参加」とみなされています。

参考:SBT(Science Based Targets)について(環境省)

 

SBT認定による企業のメリット

SBT認定により企業が受けるメリットは少なくありません。まず、環境意識の高い企業としてアピールできることがあげられます。社会的評価が上がれば新たな機会の獲得につながるでしょう。

また、排出削減にともなう事業の効率化により、経費削減やリスクの低減も可能です。以下に主なメリットについて説明していきます。


気候変動対策に取り組む企業としてアピールできる

夏の酷暑や豪雨など気候変動の影響を感じる機会が増え、脱炭素社会実現の必要性は広く認識されています。気候変動が引き起こす問題に関心があるかどうかを尋ねた内閣府の世論調査によると、「関心がある」とする回答は約9割にのぼりました。

気候変動問題への取り組み姿勢をアピールすることになり、企業イメージの向上につながり得ると考えられます。

SBT認定を取得することで、中長期的な資産形成目的としてサステナビリティ投資を選択する投資家に対し、プラス要素ともなります。適切な気候変動対策は、企業の長期的な安定性や成長の可能性を高めるため、持続可能性が高い企業として社会的な評価が上がります。

企業の環境情報を投資家に向けて提供しているCDPスコアの採点においても、SBT認定の取得は加点となり有利です。

みずほフィナンシャルグループは、SBT認定など環境配慮に関する情報開示について一定基準を満たした企業に対し、融資や助言などを行う商品を提供しています。

また、花王株式会社は、温室効果ガス削減を指標の一つとするサステナビリティ・リンク・ボンド(社債)を2023年に発行しました。SBT認定により発行条件が有利となるほか、投資家の関心を集め、低コストで資金調達できる仕組みとなっています。

以上のように、SBT認定を受けた企業はESG投資やグリーンボンド市場で高評価を得られ、投資家やESGファンドの資金を集めやすいというメリットがあります。

また、国土交通省のいくつかの地方整備局では、工事入札においてカーボンニュートラルへの取り組みが評価項目として追加され、SBT認定は加点となります。

こうした動きは今後広がるとみられ、SBT認定の取得により排出量削減を確実に進める企業であることの証明が可能です。

参考:
「Mizuho Eco Finance」の取扱開始について
花王 サステナビリティ・リンク・ボンドフレームワーク
2024 CDPシティ・スコアリング基準
東北地方整備局 工事の総合評価落札方式運用ガイドライン


サプライヤーとしての差別化が可能

企業の温室効果ガス排出の大半は、自社工場やオフィスだけでなく、原材料調達・輸送・販売・使用・廃棄などのサプライチェーン全体で発生しています。よって、サプライヤーや取引先も含めた全体での温室効果ガス排出削減が必要です。

SBT認定企業の中には、サプライヤーにSBT目標設定を求めることを目標として掲げるものも存在します。

例えば、株式会社イオンのスコープ3に関する目標の一つは「購入した製品・サービスによる排出量の80%に相当するサプライヤーに、 SBT目標を設定させる 」です。大和ハウス工業株式会社は「購入先サプライヤーの90%にSBT目標を設定させる」としています。

SBT認定を取得すればこれらの要望に対応でき、取引先との良好な関係維持のみならず新たなビジネスチャンスも広がるでしょう。

参考:環境省 SBTについて(P23:サプライヤーへの目標設定を求めるSBT認定企業)


企業全体のコスト削減と収益増につながる

SBT認定にともなう取り組みにより、コスト削減も不可能ではありません。再生可能エネルギーの活用や省エネ設備の導入は、電気代や燃料費の削減につながります。また、物流の最適化や資源の有効活用を進めることでコスト削減が可能です。

さらに、世界的に炭素税や排出権取引制度が強化される中、温室効果ガス削減は将来的な規制コストの回避につながります。

例えば大川印刷では、再生可能エネルギーの導入により2019年度のエネルギーコストは8%削減でき、売上は前年度比で8%増加しました。また、先進的な脱炭素経営がメディアに取り上げられ、売上高の経常利益率が1.8%増加したとのことです。

SBT認定の取得は単なる環境対策ではなく、エネルギーコスト・規制リスク・資金調達コストを抑え、企業全体のコスト削減と収益向上に寄与する可能性があります。

参考:環境省 中小規模事業者向けの脱炭素経営導入(P117:大川印刷)

 

世界と日本企業のSBT認定状況

WWFによると2025年2月17日現在、SBT認定を取得およびコミット(2年以内のSBT設定を表明)した企業は、世界中で1万社を超えています。そのうち、日本企業は1,522社です。

ここ数年、SBT認定を取得またはコミットする日本企業数の伸びは目覚ましく、2024年8月時点で日本のSBT認定企業数はイギリスを抜いて世界最多となりました。

2023年3月1日時点では認定取得もしくはコミットした企業数が438社であったため、直近2年間で3.4倍もの大きな増加状況となっています。
2015年10月にソニーが日本企業として最初の認定を取得し、数多くの大企業・中小企業が主力となり、アジアや世界全体のSBT参加を牽引しているといえるでしょう。

参考(WWFジャパン):
WWFジャパン 日本企業SBT認定・コミット数が世界1位に
WWFジャパン Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは


TerrascopeのSBT認定支援と企業事例

最後に、脱炭素ソフトウェアを提供するTerrascope(テラスコープ)が提供するSBT認定支援の内容、業界における強み、実際に支援した企業事例をご紹介します。

SBT支援内容

Terrascopeの主なSBT認定の支援内容としては、主に下記対応が対象となります。

  • 企業全体のカーボンフットプリント測定
  • FLAG(森林・土地・農業)セクター企業の排出量測定
  • SBTの目標設定と申請書類の作成支援
  • SBT事務局による目標設定の妥当性確認などのやり取り・回答をサポート

Terrascopeの強み

Terrascopeではサステナビリティの専門家が日本国内および海外の企業の脱炭素化のサポートをしています。そのため、SBT申請内容への理解も深く、正確にそして迅速に申請書の作成を支援できます。

企業全体のカーボンフットプリント、FLAGセクターの排出量測定も実施しているため、一貫したサポートが可能である強みもあります。

SBTはグローバルなイニシアチブのため、日本企業が適切な目標設定の上、申請を進めることに苦労する場面が多々あります。言語面はもちろん、世界の脱炭素化業界におけるグローバル感覚を備えたTerrascopeのグローバル人材が日本企業をサポートいたします。

企業へのSBT支援事例

日本国内や海外の有数企業の脱炭素化を支援するTerrascopeは、SBT認定の支援事例が豊富にあり、複数の日本国内の大手食品企業へのTerrascopeソフトウェアを通じた排出量計測・削減支援や、SBT対応の支援を行っています。

また、海外大手企業の支援の一例としては、英国に本社を置く大手食品飲料会社の「Princes Group」があげられます。

Princesは企業レベル・製品レベルの排出量を効果的に測定・管理するためにTerrascopeを採用し、スコープ1、2、3の包括的な排出量測定を実現し、調達戦略の改善にも取組み、脱炭素化を推進しています。SBT認定の対応も進め、Terrascopeが包括的に脱炭素化を支援しています。

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