地球温暖化の進行に伴い世界中で「脱炭素化」への企業の取組みも具体化されつつあり、日本の大企業を中心にCO2排出量の計算や削減に取り組む事例も出ている一方で、依然として課題も多いのが現状です。
この記事ではそもそも「脱炭素化」とはどのような取組みか、「カーボンニュートラル」との違い、具体的な企業の取組みや課題、「Terrascope」の脱炭素化プラットフォーム・システムを活用した成功事例を紹介します。
目次
脱炭素化とは、簡単に分かりやすく言うと温室効果ガスの中でもっとも排出量の多い、二酸化炭素の排出量をゼロにすることです。
二酸化炭素は温室効果ガスの中で85%を占めており、メタンや一酸化二窒素やフロンに比べて非常に高い割合を占めています。
そのため地球温暖化を防止するためには、二酸化炭素の排出量を削減する必要があります。
しかし現代の私たちの生活において、二酸化炭素を排出する化石燃料の使用は不可欠になっています。
例えば日常生活を支える電化製品に使う電力は化石燃料を燃やしたエネルギーを多く利用しているほか、調理器具や給湯器などは天然ガスなどの化石燃料を燃焼させて使います。
その他、車や電車などの輸送機器も化石燃料由来のエネルギーを使用しています。
こうして排出された二酸化炭素は、地球環境に蓄積され続けて温暖化の促進につながっています。
脱炭素の必要性が高まったきっかけは2015年にフランスのパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠条約第21回締約国会議)です。
COP21では世界の190以上の国と地域が参加して、世界の平均気温上昇を1.5℃までに抑えるために温室効果ガスの排出量削減を取り決めました。
具体的には各国が5年ごとに温室効果ガスの削減目標を策定・提出することが定められました。
(関連記事:CO2排出量の計算方法・ツール・Terrascope活用企業の削減事例)
日本国内では国際的な脱炭素化の流れの中で、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を実現することを目標に掲げました。
国内企業は今後自社やサプライチェーンが排出する温室効果ガスの開示や、削減目標の設定・達成を目指す必要があります。
そのために政府ではカーボンプライシングの導入や、補助金制度の技術開発支援により企業の取り組みを加速させる仕組みづくりを進めています。
カーボンプライシング制度とは企業が排出した二酸化炭素に対して課税する制度で、いくつかの仕組みがあります。
①炭素税
企業が事業活動で排出した二酸化炭素に対して課税する。
②クレジット取引
二酸化炭素の排出量削減を証書として売買取引を行う。
③排出量取引制度
企業が排出制限を超過した場合に課税され、制限以下であれば売却が可能。
一方で政府が目指す脱炭素の実現には今後多くの課題が残されています。
例えば日本の一次エネルギーは化石燃料由来の割合が約85%と、先進国の中でも依存度合いが高い問題があります。
二酸化炭素排出量の多い石炭や石油を依然として多く利用しており、再生可能エネルギーへの転換がなかなか進んでいません。
その他にも日本の二酸化炭素排出量の約20%を占める物流業界では、輸送機器の主な燃料を化石燃料に頼っています。また、車両の電動化が進む欧米に比べて取り組みが進まない現状があります。
脱炭素とカーボンニュートラルは、どちらも温室効果ガスの削減を目指す手段ですが、取り組み内容に違いがあります。
脱炭素が二酸化炭素排出量をゼロにするのに対して、カーボンニュートラルは二酸化炭素を排出してもその分吸収すれば良いという考えです。
二酸化炭素排出量をゼロにすることで、大気中の二酸化炭素濃度が薄くなり地球温暖化の対策となります。
例えば化石燃料を使った火力発電をやめて、太陽光発電に切り替えると二酸化炭素の排出が無くなります。
このように脱炭素は効率化などによる削減量低減の延長ではなく、方式の変更といった大きな変化が必要となります。
カーボンニュートラルは実質的な二酸化炭素排出量をゼロにする取り組みです。
例えば化石燃料で発電をして二酸化炭素を排出しても、同量を植物などで吸収すればプラスマイナスゼロとなります。
その他には発電などで合成燃料を使用すると、いったん吸収した二酸化炭素を排出しているので排出量の合計量は増えずカーボンニュートラルに当たります。
脱炭素とカーボンニュートラルの考え方や方法は異なりますが、どちらの方式でも大気中の二酸化炭素濃度は増えません。
地球温暖化対策として、どちらの取り組みも今後は重要になると考えられています。
また、関連する「ネットゼロ」は温室効果ガスの正味排出量をゼロにするという意味の、地球温暖化対策を進めるための考え方の一つです。正味排出量ゼロとは排出量と吸収量の合計をゼロにするという意味です。
(関連トピック・記事)
- ネットゼロとは?Terrascopeのソフトウェア機能や有力企業の取組み事例
- カーボンフットプリントとは?計算方法・必要性・企業事例を解説
前述した社会的な情勢変化により、企業は今後更に脱炭素への取り組みが求められるようになります。
取り組みに参画するためには労力やコストなどの負担が必要となりますが、一方で脱炭素化の取組みによる大きなメリットがあります。
環境先進国である欧米では既に取引先への温室効果ガス排出削減を要求してきています。
今後はサプライヤー排出量を算定して開示できない企業とは取引できないケースが出る可能性があります。
そのため脱炭素に取り組んでいる企業が相対的に優位性を確保できます。
脱炭素に取り組むことでエネルギー費やその他費用の低減が可能となります。
例えば太陽光発電を導入して社内発電することで、外部から購入する電力量を抑えてコストを下げられる可能性があります。
補助金制度の充実、炭素税や排出量取引が進んでいけばさらにコストメリットは広がります。
その他にも物流ルートの最適化や、余剰在庫の削減など無駄をなくすことで企業の事業体質を強化することにもつながります。
脱炭素に取り組む企業を優先的に投資するESG投資が普及してきており、資金調達が容易になる可能性があります。
既に企業が開示するコーポレートガバナンスにおいて、環境への取り組みを重要視する投資家も現れています。
このようなメリットがある脱炭素に取り組みを開始している企業が多く現れています。
それらの企業の多くは、初めての取り組みで試行錯誤を繰り返し、同時に様々な課題を抱えており、解決とさらなる成長へと向かっています。
ここでは脱炭素化に取り組んでいる2社の事例を環境省のウェブサイトから紹介します。
飲料や種類の販売でグローバルなビジネスを展開しているアサヒグループホールディングスは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」を掲げており環境問題への取り組み目標を開示しています。
その中では脱炭素社会に向けたカーボン排出量の削減(Beyond カーボンニュートラル)、包装容器の資源利用最小化による海洋生態系の保全などを明記しています。
具体的な活動として、アサヒグループは2019年にTCFD低減に賛同してシナリオ分析を開始しました。
その中で気候変動リスクがビジネスに及ぼす影響として炭素税の導入、原料調達へのコスト影響などを定量評価しています。
算定の結果、2030年のスコープ1、2による炭素税が153億円に上り、スコープ3では728億円の費用が発生するとしています。
(関連記事:スコープ3の算定が難しい理由とは?Terrascopeの解決策・企業事例)
アサヒグループは取り組みの課題として以下の項目を挙げています。
・データ入手にかかる社内調整の煩雑さ
・取得したデータの妥当性の確認
・シナリオ分析プロセスの難解さ
・開示要請の増加への対応
シナリオ分析には社内関係部署との連携が不可欠で、約1年の期間がかかったとしています。
(環境省 事例ページ:アサヒグループのTCFD提言への取り組み)
2社目に紹介するのは神奈川県海老名市に本社を置く、貨物自動車運送業を営むスタンダード運輸です。
主な事業は輸送事業、レンタカー事業、共同配送・倉庫事業、リサイクル事業です。
輸送事業では関東広域で展開しており、住宅設備を物流センターから建設現場への輸送する業務や、一般消費者へ靴、・雑貨・飲料などを輸送する業務を営んでいます。
スタンダード運輸では物流業界が抱える人手不足や高齢化、小規模零細業者が多いといった特有の問題に対して、脱炭素経営への取り組みで企業価値を向上させることが必要だと考えています。
スタンダード運輸の脱炭素への取り組みは主に以下の通りです。
①エコドライブの徹底により輸送時の使用エネルギーを削減する
②次世代車両(低炭素型車両、EVなど)、代替燃料(バイオ燃料、e-fuelなど)の活用
③物流センターからの配送距離の短縮化
④倉庫、工場などでの再生可能エネルギーの利用
⑤3R(リデュース・リユース・リサイクル)を基本とするサプライチェーンの構築(スコープ3対応)
これらの取り組みの特徴に、自社だけでなくサプライヤー排出量(スコープ3)対応を掲げていることがあります。
(関連記事:サプライチェーン排出量とは?算定方法や義務化の流れ、取組み事例を解説)
スタンダード運輸ではCO2排出量算定にソフトを活用しており、日々の燃料使用量、電力使用量を入力してデータ分析ができるシステムを導入しました。
2018年から開始した算定の実績を基に、2030年までに2022年比で約30%のCO2排出量を削減する計画を掲げています。
(環境省 事例ページ:貨物輸送事業者によるカーボンニュートラル実現に向けて)
上記事例のように、脱炭素への取り組みを開始した企業の多くが、データ入手にかかるコストや工数、目標の設定など多くのプロセスで課題を抱えています。
そのため依然として大企業以外では取り組み開始のハードルが高いのが現状です。
しかし一方で脱炭素にAI技術を導入して大幅に時間を削減し、効果的な対策立案の設定を実施している事例があります。
脱炭素に特化したプラットフォーム・システム「Terrascope(テラスコープ)」を導入した企業では、すでに効果を発揮している事例が多数あります。
Terrascopeの特徴の一つは、CO2排出量などのデータ測定・収集プロセスを従来の約5倍の速度で処理可能であり、データの妥当性まで評価が可能です。
さらに削減計画の立案では、データを国や事業、工場、プロセスごとに層別を行い、その中で重点的に取り組みが必要なスポットを検出します。
計画立案後の進捗管理では、リアルタイムの達成状況や前年度との比較が容易にできて、他部署との情報共有も簡単にできます。
これまでにTerrascopeを採用して脱炭素化に取り組んでいる企業には、
飲料大手の「ポッカグループ」、食材輸入業を営む「三菱商事アグリアライアンス」、総合食品商社の「三菱食品」、EUを拠点とする食品メーカー「Princes Group」、東南アジアの不動産関連事業者「PropertyGuru」などがあります。
国内外で実績があり、複雑なサプライチェーンを構築する企業においても精度の高いCO2排出量の算出と、効果の高い対策立案で効果を表しています。
Terrascopeの事例やプラットフォーム機能の詳細は以下のページも併せてお読みください。
・Terrascope(テラスコープ)の企業事例・ケーススタディ
・Terrascope(テラスコープ)のプラットフォーム機能紹介
Terrascopeのプラットフォーム・システムでは、下記それぞれのプロセスをサポートする機能と、サステナビリティ専門家やカーボンデータ分析家のコンサルティングを提供しています。
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